磯山さやかの“演技力”を堪能 『風、薫る』新展開でみせた驚くほどの“自然さ”

互いにかけがえのない関係性になっていたりん(見上愛)と直美(上坂樹里)は、その絆をより強いものとしつつ、それぞれの道へ。NHK連続テレビ小説『風、薫る』はまた次なる章へと歩を進めた。
「朝ドラ」とは、長い時間をかけて、主人公たちの人生を描いていくもの。章が変われば、自然と登場人物たちの顔ぶれも変わることになる。これからの物語の展開を左右するのはどんな存在だろうか。ここでは長見サワというキャラクターに注目してみたい。演じているのは磯山さやかである。

本作は、激動の明治期を舞台に、2人の“トレインドナース(=正規に訓練された看護師)”の活躍を描くヒューマンドラマ。“バディ”として本格的に看護の道を歩みはじめたヒロインたちには、輝かしい未来が待っているものと信じていた。が、彼女らが向き合うのは、一人ひとりの人間の命。りんはある患者と関わる中でトラウマを負い、この仕事から距離を置くこととなった。そうして単身、新潟へ。この地で彼女の心にどのような変化が起きるのかが、これからの見どころになっていくのだろう。
そんな展開の中で長見サワがはじめて姿を見せたのは、第78回の終盤でのこと。日常のひとコマの中で、りんと彼女はいつの間にか出会っていた。りんの物語において、そして『風、薫る』という作品において、果たしてサワはどのような役割を背負っているのだろうか。

それにしても、サワの登場は驚くほど自然なものだった。番組公式サイトの人物紹介欄に載っているくらいだから、彼女もこの「新潟編」の主要な人物のひとりであるのは間違いない。にも関わらず、非常にあっさりと初登場を果たしたのである。まるで新潟の景色の一部のような自然さで。
演じる磯山といえば、出演した映画『ラブ≠コメディ』が公開中であり、俳優としてだけでなくマルチタレントとしても活躍する存在だ。
安達祐実、相武紗季とともにトリプル主演を務めたドラマ『夫よ、死んでくれないか』(2025年/テレ東系)や、柄本明をはじめとするベテラン映画人の中心に立って映画愛を炸裂させた主演作『愛のこむらがえり』(2023年)といった近年の代表作があるいっぽうで、バラエティ番組などで垣間見せる磯山本人の素顔も広く視聴者には刻まれていることだろう。
オーディエンスによっては、個々の作品で出会ったキャラクターたちの印象が濃く残っている人がいれば、磯山本人のキャラクターの印象のほうが強くあるという人もいるはず。いや、彼女が自分のキャラクターを活かした仕事は、バラエティ番組にとどまらない。ラジオにCMだってある。

いま気になるのは、『風、薫る』で披露するのは演技者としての一面か、それともより磯山本人の資質を活かしたパフォーマンスなのか、ということだ。あの自然な登場シーンを踏まえると、ここで彼女に求められているのは、きっと前者なのだろう。
サワはりんが舎監を務めることとなった寮で暮らす、長見久(近藤華)の母親である。久はりんが東京からやってきたことに強い関心があるようで、彼女との交流は、りんが再び東京へと意識を向けるきっかけにもなるのではないか。サワはそんな久の母親なのだから、りんにとって新たな関係性の入口となる可能性だって秘めている。
磯山が「朝ドラ」に姿を見せるのは、これがはじめてのこと。“国民的ドラマ”という大きな舞台で演技を披露することは、彼女が俳優として新しい扉を開くきっかけにもなるのではないだろうか。俳優・磯山さやかは自身の存在を、『風、薫る』の世界に、いったいどのように溶け込ませていくのか。その答えは、これから少しずつ明らかになっていくこととなる。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK




















