上坂樹里はNHKドラマで輝く俳優だ 吉田恵里香作品など『風、薫る』に至るまでの歩み

もうひとつ忘れられないのが、2025年のNHK夜ドラ『いつか、無重力の宙で』。上坂は森田望智が演じるひかりの高校時代を演じた。声色や台詞回し、ふとした表情の作り方まで森田にどこか似ていて、“過去”と“現在”を違和感なくつなげてみせたのである。しかも、ひかりはこれまで上坂が演じてきた役柄とは少し趣が異なっていて、自然と人が集まるような求心力があり、やりたいことには真正面から飛び込むタイプ。王道ヒロイン像を伸びやかに演じた姿に心を奪われた。

そして現在の直美役は、『生理のおじさん』で見せた芯の強さ、『いつか、無重力の宙で』で開花した王道ヒロイン性をあわせ持った、まさにハイブリッドな存在だ。過酷な生い立ちを背負いながらも、苦境に負けない雑草魂があり、ときに周囲を驚かせるほどの行動力を発揮する直美は、『風、薫る』のダブルヒロインのなかでも、より従来の朝ドラヒロインのDNAを色濃く受け継いだキャラクターだろう。一方で、当時では恵まれた環境に身を置きながらも、当たり前とされている価値観に「はて?」を投げかけつづけるりんには、現代的な朝ドラヒロインの系譜を感じる。

そんな直美に変化をもたらしたのが、セツとの出会いだった。女郎として生きざるを得なかったセツと向き合うなかで、「負けているほう、不利なほう、弱っているほうを助けたい」という思いが生まれる。家族という後ろ盾もなく、ただひとり生き抜くことで精一杯だった直美が、自分以外の誰かのために手を差し伸べたいと願うようになる。その強さは失われないまま、凛とした視線の奥にやわらかな慈しみが宿ったのが印象的だった。まさに第11週「凪にそよぐ」は、直美のなかに“ケアの精神”が芽吹いた週だったのだろう。
『生理のおじさんとその娘』で花を演じたときのあどけなさが、ちょっと懐かしくなるくらいに、上坂はぐんぐん成長している。これぞ半年かけて主人公を見守る朝ドラの醍醐味だろう。『風、薫る』の放送を終える頃、きっと私たちは、それまでとはまったく違う顔つきの上坂樹里を目にするはずだ。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK






















