加速する“古典の現代化”ブーム 『パリピ孔明』『超かぐや姫!』『あかね噺』が示す可能性

『あかね噺』
最後に『あかね噺』だ。真打昇進試験で破門された落語家の父親への想いを胸に、落語家の道を歩んでいく阿良川あかねの成長物語である。この作品は、落語の世界を、「友情・努力・勝利」やバトル要素といった、いわゆる“ジャンプ・メソッド”と、上手く融合させている。詳しいことは「リアルサウンドブック」の別の書評で書いているので、そちらを参照してほしい(※)。
『あかね噺』なぜヒット作に? 落語シーンを“バトル漫画”として描く革新性
『あかね噺』の連載が「週刊少年ジャンプ」で始まったとき、人気作になるのは難しいのではないかと考えた。理由は題材が、落語の世界だか…それとは別に留意したいのが、落語の世界を読者に受け入れてもらうための手法だ。落語そのものは伝統芸能であると同時に、現在も進化を続ける大衆芸能である。ただし昔に比べれば、庶民の落語への知識は薄れているように思える。

だから今の読者に、落語の世界に興味を持ってもらうためのフックが必要だ。主人公のあかねが美少女なことや、彼女のライバルとなる阿良川ひかるが声優業と落語家を兼業していることなどが、フックになっている。先に触れた“ジャンプ・メソッド”との融合もそうだ。また、落語の噺の内容を表現するときは、絵のタッチを変えて、分かりやすく見せてくれる。さまざまな工夫が織り込まれているのだ。
その中で特に感心したのが、第11巻から12巻にかけて描かれた、あかねの高座「狸賽」である。狸の化けた賽子を使い一儲けしようとする男の話だが、その高座の最中にあかねは、友人が「落語って同じキャラが噺によって別の職業で出てくるとかザラだしね」「別の噺でも繋がってるんだ落語って」といったことを思い出し、覚醒。「狸賽」の中に、「まんじゅうこわい」や「狸札」の噺を織り込む。そしてそれを“落語ヴァース”と心の中で表現するのだ。

この“落語ヴァース”が、アメコミの映画などで、複数のシリーズの登場人物を集めた世界観を意味する“マルチバース”を捩っていることはいうまでもない。このように、今のエンターテインメント作品に対して使われている言葉を、落語の噺と結びつけ、その世界の魅力を伝えてくれるのである。
以上、3つの作品を見てみると、歴史上の人物・古典文学・伝統芸能を、令和を生きる人々向けにチューニングしていることが分かる。物語の本質的な面白さは普遍的なものだが、時代に合わせて味付けを変えなければ、美味しいと思ってもらえない。それをクリアした作品だからこそ、ヒットしたのであろう。
なお、2026年の7月から放送予定のテレビアニメ『さよならララ』は、童話『人魚姫』をモチーフにしている。かつて王子との恋が成就せず、泡となって消えた人魚姫のララが、200年の時を経て、琵琶湖で人間として蘇り、もう一度、本当の愛を捜すというストーリーになるそうだ。いうまでもなく古典文学をモチーフにしたからといって、すべての作品が成功するわけではない。鍵となるのは、現代を生きる人に受け入れてもらうための工夫だ。どんな手法を使って、今のエンターテインメント作品にしてくれるのか、大いに楽しみにしている。
参照
※https://realsound.jp/book/2026/05/post-2382318.html
■放送・配信情報
『あかね噺』
テレビ朝日系全国24局ネット“IMAnimation”枠にて、毎週土曜23:30~放送
BS朝日にて、毎週日曜深夜1:00~放送
AT-Xにて、毎週日曜22:00~放送
CSテレ朝チャンネル1にて、毎週日曜21:00~放送
アニマックスにて、毎週土曜20:30~放送
他各配信プラットフォームにて配信中
キャスト:永瀬アンナ、江口拓也、高橋李依、塩野瑛久、福山潤、島﨑信長、阿座上洋平、山下誠一郎、てらそままさき、大塚明夫
原作:末永裕樹・馬上鷹将(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:渡辺歩
副監督:播摩優
シリーズ構成:土屋理敬
キャラクターデザイン・総作画監督:田中紀衣
サブキャラクターデザイン・総作画監督:新田靖成
総作画監督:香川久
衣装デザイン:島沢ノリコ
プロップデザイン:岩永悦宜
美術設定:多田周平
美術:纓田拓海
色彩設計:合田沙織
撮影監督:中村雄太
編集:廣瀬清志
音響監督:小沼則義
音楽:井筒昭雄
落語監修:林家木久彦
アニメーション制作:ゼクシズ
オープニング主題歌:桑田佳祐「人誑し / ひとたらし」(タイシタレーベル / ビクターエンタテインメント)
©末永裕樹・馬上鷹将/集英社・「あかね噺」製作委員会
公式サイト:https://akane-banashi.com/
公式X(旧Twitter):@akanebanashi_PR























