『十角館の殺人』の衝撃再び Huluオリジナル『時計館の殺人』が描く、異形の館の惨劇

綾辻行人著『時計館の殺人』がHuluで実写映像化され、Huluオリジナル『時計館の殺人』として独占配信されている。2024年に配信され好評だった『十角館の殺人』に続く、『館』シリーズの実写化第2弾だ。
綾辻の『館』シリーズは、長年人気を得てきた。謎解きや犯人当てを主眼とする本格ミステリでありつつ、作品によってはホラー要素や青春小説のテイストも強い。各作品では、今は亡き中村青司という異端の建築家が設計した建物で連続殺人が起きる。上から見ると正十角形の十角館、横腹で三連の水車が回り続ける水車館、文字通り地下に迷路を設けた迷路館など、中村は特殊な形や装飾を持つ屋敷を多く手がけた。しかも彼は、隠し部屋や隠し通路などの仕掛けを設けることを得意としたのである。
第1作『十角館の殺人』(1987年)から第9作『奇面館の殺人』(2012年)まで刊行されており、あとはシリーズを締めくくるとされる第10作『双子館の殺人』での完結を待つ状態だ。ただ、このシリーズは、外観や内装が特異な建物を舞台とするだけでなく、小説という形式ならではのたくらみで作者が読者を翻弄する内容である。実写化は難しいとされていた。ところが、Huluオリジナル『十角館の殺人』は、原作にかなり近い形に脚色し、映像化不可能と思われたトリックを堂々と成立させた。だから、ミステリファンは驚いたのだ。
同ドラマと同じく、今回の『時計館の殺人』も内片輝が監督・企画などを担当しており、原作を尊重する方針を引き継いでいる。108個の時計コレクションがある時計館の内装や調度品、文字盤から針がとりはずされた時計塔など、舞台の異様な空気が映像でよく表現されている。小説の章立て通りに話が進行するほか、建物の平面図を映して登場人物がどこにいるかを示すなど、視聴者が状況を理解しやすいように工夫しているのも好ましい。
『時計館の殺人』は、小説ではシリーズ5作目にあたる。それをなぜ実写化第2弾に選んだかといえば、一つに評価の高さがあるだろう。『時計館の殺人』は、1992年に第45回日本推理作家協会賞長編部門を受賞しており、綾辻の代表作に数えられる。また、実写化第2弾を企画するうえでは、同作が『十角館の殺人』と対になるような設定で続編的な性格を持つことも意識したと思われる。
『十角館の殺人』では、大学のミステリ研究会のメンバーが訪れた無人の角島で連続殺人が起きる。同サークルの元メンバーで島へ行かなかった江南孝明(かわみなみたかあき/通称「こなん」)は、寺の三男坊で兄に警部を持つ島田潔と出会い、かつて角島で起きた中村青司がらみの殺人事件を探ることになる。後に江南は、角島にいる仲間たちの身に起きた惨劇を知り、大きなショックを受けるのだ。
一方、『時計館の殺人』では、十角館の惨劇から三年が経ち、出版社の編集者となった江南孝明と、鹿谷門実(ししやかどみ)のペンネームでミステリ作家になった島田潔が再会する。オカルト雑誌の編集部で働く江南は、担当する特別企画の取材のため、副編集長とカメラマン、霊能者、大学のミステリー研究会のメンバーとともに、少女の亡霊が出ると噂される時計館の旧館を訪れる。泊りこみで霊と交信しようというのだ。一方、鹿谷は、ミステリー研究会の一員だが取材に参加しなかった福西涼太と出会う。鹿谷は福西とともに時計館を訪れ、管理責任者とやりとりするうちに、亡くなった先代当主が遺言とともに残した謎めいた詩の意味を解いてほしいという依頼を受けることに。























