谷口悟朗×吉田玲子が語り合うオリジナルアニメの存在意義 “多様性”のために必要なこと

谷口悟朗×吉田玲子が語る日本アニメの未来

谷口悟朗監督の真骨頂は“子供向けファンタジー”?

——谷口監督と吉田さんは今回初めてご一緒されたとのことですが、お互いのクリエイターとしてリスペクトしている点について聞かせてください。

吉田:オリジナル作品をコンスタントに作っている監督さんはそんなに多くないので、そういう意味でゼロベースから何かを作り上げる力のある方だなというのは感じていました。

谷口:吉田さんは昔、『中学生日記』(※名古屋市にある中学校・高校を舞台にしたNHKのテレビドラマシリーズ。生徒役の出演者は名古屋近郊に住む中学生から募集していた)の脚本に参加されていますよね。私、演劇部にいたので出演したかったんですよ。

吉田:あ、そうなんですね。

谷口:隣町に住んでいたので出られなかったんです。だから『中学生日記』に関わっていた方は基本的にすごいなぁと感じていて。実際お仕事させていただいて一番ビックリしたのは、吉田さん、スケジュールをすごくきっちり守るんですよ。

吉田:それはあまり言わなくても(笑)。

谷口:いや、ものすごく助かって(笑)。あとは、ご本人から“嫌な計算”が透けて見えないといえばいいんですかね。プロの脚本家って、計算が悪目立ちするときがあるんです。視聴者のほうを向きすぎていたり、「ここで魅せたい」という雰囲気が脚本から強く感じられると、その部分が悪目立ちしてしまうんです。吉田さんの場合、計算はもちろんあるのだと思いますけど、人物描写の背後などにそれが隠れていてうまいなと思いました。

吉田:キャラクターに寄り添って話を作るタイプなので、自然とそうなるんだろうなという感じがしています。特に何かを意図してというよりも、キャラクターの目で世界を見たり人間関係を作ったりしていますので。

——『たまこまーけっと』のような作品も、吉田さんのそうした感性があったからこそ生まれたといえるかもしれませんね。

吉田:そうかもしれません。すごくちっちゃい、地味な話だけど豊かな世界があるような傾向のお話は好きです。

谷口:そういう意味では、吉田さんの描く等身大のキャラクターがいてくれて本当にありがたかったです。実写の現場を経験していることで、お互い通じ合える部分もあったのかもしれません。

吉田:今回ご一緒して、谷口監督の違う一面が見られて楽しかったです。谷口監督はパンチがあってダイナミックな作品を作るというのが私のイメージだったんですが、「あ、こんなに繊細にキャラクターを捉えてくださるんだな」とわかったことが新鮮でした。

谷口:どうしても派手なイメージが先行するのかもしれません(笑)。

吉田:子供を主人公にしたファンタジーな作品なんかも谷口さんならもっと作れそうですし、また一緒にやると楽しそうだなという気がします。

谷口:本当は私、そっちに行きたかったんですよ。子供向け番組を作りたかったんですが、自分が監督になったときには子供向け番組をたくさん作る時代ではなくなっていて、ハイターゲット向けのアニメを作ることになったんです。そしたらそっちのジャンルでお客さんの支持をいただけちゃって(笑)、その手のジャンルが中心になっていきました。なかなか世の中思い通りにはいかないですね。

——谷口監督が手がけた作品には今でも名作として語り継がれているものがたくさんありますが、そういう背景があったわけですね。

谷口:『無限のリヴァイアス』の相葉昴治なんて、いわばサンライズで最弱の主人公ですが、あれは私がタツノコプロの系列(J.C.STAFF)出身でサンライズのお作法みたいなものをよく知らなかったからだと思うんです。それがたまたまうまくハマったんじゃないかなと。

——谷口監督から見て、吉田さんとご一緒した印象はいかがですか?

谷口:もしかしたら、NHK大河ドラマのような骨太の作品を作れるんじゃないのかなとは思いましたね。

吉田:えぇーっ? いや、大河はいいです(笑)。

谷口:(笑)。

吉田:1年も毎週放送する脚本を書くなんて、みなさん大変だろうなとすごく尊敬しています。

谷口:でもさきほどもおっしゃっていたように、脚本を書くときの目線がキャラクターに寄り添っているので、世界観やキャラクターを取り巻く状況に脚本家が振り回されない。その状況で人物がどう動くか、どう考えるかという発想になっているからこそ、朝ドラや大河ドラマの脚本を書かれると観やすくて感情移入しやすい作品になっていくのではないかと感じましたし、観てみたいと思いました。

——本作はどう受け止められてほしいか、一言ずつお願いします。

谷口:どのように受け止めるかは自由だと思っていますし、観客のみなさんの中で完結するものだと思っているので、どういうふうに観てほしいと強制するつもりはあまりありません。ただ、大画面で観るにふさわしいレイアウトや動きがたくさんありますし、音響についても映画館のスピーカーではないと拾いきれない音があります。劇伴も高音や低音の部分は映画館でないとカットされる可能性もあります。私の立場としては、ぜひともこの作品は映画館で鑑賞して、作品世界に浸って楽しんでいただけたら嬉しいです。

吉田:美術や背景が非常に素晴らしいので、まずはストーリーを楽しんでいただいて、2回目以降は背景や主人公バレエの動きなどのアニメーションに注目していただけると、より楽しく観られるんじゃないかなと思います。

■公開情報
劇場アニメ『パリに咲くエトワール』
全国公開中
出演:當真あみ、嵐莉菜、早乙女太一、門脇麦、尾上松也、角田晃広、津田健次郎、榊原良子、大塚明夫ほか
原作:谷口悟朗・BNF・ARVO
監督:谷口悟朗
脚本:吉田玲子
キャラクター原案:近藤勝也
キャラクターデザイン・総作画監督:山下祐
音楽:服部隆之
主題歌:「風に乗る」緑黄色社会(ソニー・ミュージックレーベルズ)
アニメーション制作:アルボアニメーション
製作:「パリに咲くエトワール」製作委員会
配給:松竹
©「パリに咲くエトワール」製作委員会
公式サイト:https://sh-anime.shochiku.co.jp/parieto-movie/
公式X(旧Twitter):@parieto_movie
公式Instagram:@parieto_movie

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