『ばけばけ』夏目透羽は『ブギウギ』富田望生と重なる? 松野家に訪れた失業危機

“焼き網騒動”を経て、家族の絆が深まった松野家。しかし、『ばけばけ』(NHK総合)第101話では、早くも熊本での暮らしに暗雲が立ち込める。大黒柱であるヘブン(トミー・バストウ)に、突如として失業の可能性が浮上したのだ。
女中・クマ(夏目透羽)のために嘘をついた丈(杉田雷麟)と正木(日高由起刀)から“日本人の心”を感じ取り、熊本に来て初めて一心不乱に筆を走らせたヘブン。トキ(髙石あかり)たちが音を立てないように神経を尖らせた甲斐もあり、原稿は早々に完成した。だが、その直後、ヘブンは同僚の作山(橋本淳)から、帝国議会で高等中学校を減らすことが審議されており、その対象に第五高等中学校も含まれていることを聞く。

「ワタシハ、ホントウハ、エイゴキョウシナイ。カクノヒトデス!」と喜んでいたところからの急転直下の出来事。ヘブンが来日した一番の目的は日本滞在記を執筆するためであり、あくまで自分は文筆家であるという自負があった。しかし、今や英語教師の仕事は大事な収入源であり、もし熊本第五高等中学校が閉校となれば、失業し、家族が路頭に迷ってしまう。自分を慕って、熊本までついてきてくれた教え子の丈と正木にも申し訳が立たない。ヘブンは家族を混乱させないために、このことを黙っておこうとしたが、翌日の新聞であっさりとバレてしまう。
また貧しい暮らしに逆戻りするかもしれないという事態を前に、トキたちはさぞ焦るかと思いきや、意外にも落ち着いていた。トキもフミ(池脇千鶴)も、もしヘブンが失業したら代わりに働く覚悟だ。これを機に家計も見直し、いつそのときが来てもいいように備える。よく考えれば、トキたちは貧しかった頃もそれなりに楽しく暮らしていた。もちろん、当時は大変だったが、何不自由ない生活がいかに暇かを経験したトキたちはあの頃はあの頃で良かったと思えるのではないだろうか。寝たら顔の横に顔がある長屋暮らしも今思えば面白く、7人ですし詰めになる想像をして笑い合うトキとフミ。

そもそも、そこまで差し迫った話でもなかった。図らずも、司之介(岡部たかし)が小豆相場で増やしたタンス貯金があり、しばらくはそれで生活していける。一方で、司之介は焦っていた。つい先日までヒリヒリとした感覚を味わいたくて、わざと借金を作ろうとしていた司之介だが、急に今の生活を手放すのが惜しくなったのだろう。再び働くことだけは何としてでも阻止したい司之介は、再び荒金九州男(夙川アトム)にお金を増やしてもらおうとする。だが、投資にしてもギャンブルにしても欲をかいた途端に失敗するもの。荒金が人の不安に付け込む男ではなかったことが幸いだ。今はうまい話はないと断った荒金は、名前と風貌がとてつもなく怪しいだけで、中身は誠実な男である。
そして司之介以上にナーバスになっているのがクマだ。松野家はクマが思わず萎縮するほど、高い給金を支払っている。だが、もともとトキとフミは自分たちだけで家事をしており、本来は女中など必要ない。当然のことながら、もし生活が立ち行かなくなったら、最初に削減対象になるのは女中の給金だろう。クマは自分がクビになるのではないかと思い、油断すれば、すぐに涙が出てくる状態にある。
頑張り屋さんだけど、ちょっぴり空回り気味で、気が強いのかと思いきや、意外と繊細なところがあるクマ。彼女を見ていると、2023年度後期放送の朝ドラ『ブギウギ』(NHK総合)で富田望生が演じた小夜を思い出す。小夜はヒロインである歌手・スズ子(趣里)の付き人で、何かとトラブルを引き起こすことから視聴者の反感を買ったときも。しかし、そんな小夜には12歳で奉公に出されたのち、いろいろな人から騙されてきた過去があり、それが疑り深い性格に繋がっていた。
『ブギウギ』にはなぜ“困った人”が多い? 富田望生演じる小夜に同情させない脚本の意図
戦時下でのスズ子(趣里)と愛助(水上恒司)の恋に注目が集まるNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。2人の関係になぜか反対の意を唱えて…クマも身寄りがなく、制作統括の橋爪國臣によると「女中として一生懸命に働いていたんです。けれども、ちょっとしたミスでクビになってしまい、彷徨っていたところをたまたま女中の募集をしていたヘブンさんに雇ってもらった」(※)という裏設定がある。だからこそ、善人の塊みたいなトキやフミの前でも気を張ってきたのだろうし、「ずっと一緒だけん」と言われてもにわかには信じられないのだろう。自分が座っていた場所に座ろうとした丈を、「私の不幸せがうつるけん」と必死に止めるクマがあまりにも痛々しかった。どこかで自分が幸せになれるはずがないという呪いを、彼女は自身にかけてしまっているのかもしれない。
そんなクマの様子を見て、真っ先に机に向かったヘブン。教師の仕事がなくなっても、自分が家族を養っていかなければならないという責任感が、彼を専業作家に押し上げていくのだろうか。
参照
※ https://realsound.jp/movie/2026/02/post-2309985.html
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK























