『夫に間違いありません』が描く人間のどうしようもなさ 追い詰められた中村海人の選択

『夫に間違いありません』中村海人の選択は?

 2月2日放送の『夫に間違いありません』(カンテレ・フジテレビ系)第5話では、子どもの頃に交わした約束が再来した。

 第4話で、紗春(桜井ユキ)は一樹(安田顕)の右手のほくろに気づいた。しかし、紗春は、遺体が自分の夫であることに気づいていない。紗春は、聖子(松下奈緒)に店で働かせてほしいと頼む。失踪した夫の生命保険の支払いで家計が厳しいと聞き、聖子は紗春を受け入れた。

 光聖(中村海人)は、聖子に一樹と縁を切るように言う。父親になる光聖に、姉の聖子は「子どもの頃にした約束」を忘れていないかと念を押した。聖子は、光聖に幸せになってほしいのだ。瑠美子(白宮みずほ)を殺してしまった一樹は、おびえながら暮らしていた。その一樹の前に現れた光聖は、一樹に「もう家族じゃない」と言って突き放した。

 第5話で物語を動かしたのが、記者の天童(宮沢氷魚)だ。冒頭のシーンにつながる一連の展開で、天童は九条ゆり(余貴美子)の汚職疑惑を追及する中で、九条の娘婿である光聖が、常浜銀行で異例の昇進を果たしたことを知る。光聖の前に現れた天童は、疑惑の証拠を携えていた。

 光聖は、第4話に続いてドラマの中心になっていて、天童の追及を一人で受け止める。追い詰められた光聖が、一樹が殺人犯であることを言いかけたところで第5話は終わったが、そこに至る心理的な変遷が丁寧に描かれていた。

 たった一人の姉で、たった一人の弟。それぞれが唯一の肉親である聖子と光聖は、強い絆で結ばれている。聖子にも、光聖にも家族ができて、家族との間で引き裂かれている。聖子は、保険金の返還を免れたことを隠し通すために弟を巻き込み、光聖は、妻と子のために、姉の夫を天童に差し出そうとしている。それが意味する未来は姉弟の断絶である。

 聖子も光聖も、自らの意思で手を汚しているのだが、それだけではなくて、意図しない運命の歯車に巻き込まれていく様子が絶妙である。たとえば、光聖なら、家族を守るために防波堤になっているのだが、それは九条に生い立ちの弱みを握られ、まゆ(松井玲奈)と生まれてくる赤ん坊を人質に取られる形で、利用されているからでもある。

 一樹から離れられない聖子をもどかしく思いつつ、聖子が自分を裏切る夫を切り捨てられないのは、家族に関して過去のトラウマに由来する執着があるから。聖子も光聖も、無意識のうちに自分が背負ってきたものに引きずられている。光聖は、聖子に言われた「自分の家族ができたら何を犠牲にしても子どもを守る」という約束を守ろうとして、その結果、一樹に矛先を向ける姿はどうにもやりきれない。

 自己犠牲と自己正当化がないまぜになっていて、聖子も光聖もそのことに無自覚なのだが、考えてみると、私たちだって自分の心に翻弄されてどうにもならないときはある。一樹が光聖に発した「みんながみんな、そんなに正しく生きてるのかよ。悪いとわかってても、そっちを選んじゃう時もあるだろ」は、正しくあろうとして間違えてしまう人間の弱さとどうしようもなさを言い表していた。

 『夫に間違いありません』というタイトルは、遺体を目の当たりにした聖子の言葉だが、紗春にとっては、遺体が自分の夫であることを確かめる終盤の展開を指すものだろう。紗春と一樹には接点があり、2年前のクリスマスイブに、酔いつぶれて倒れていた一樹の財布が、紗春を介して夫である幸雄(今里真)の手に渡った可能性が示唆された。一樹に会った日に紗春は家にいたはずで、記憶違いでなければ財布を拾った事実をあえて言わなかったことになる。紗春は何を隠しているのだろうか。

『夫に間違いありません』の画像

夫に間違いありません

川で発見された遺体を、「行方不明になっている男性に間違いない」という親族の証言を受けて引き渡したが、後日その男性が帰宅したことで、“遺体の取り違え”が発覚したという衝撃的な事件に着想を得たサスペンスドラマ。

■放送情報
『夫に間違いありません』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:松下奈緒、桜井ユキ、宮沢氷魚、中村海人、松井玲奈、山﨑真斗、吉本実由、白宮みずほ、大朏岳優、二井景彪、磯村アメリ、前川泰之、朝加真由美、余貴美子、安田顕ほか
脚本:おかざきさとこ
演出:国本雅広、安里麻里、保坂昭一
プロデューサー:近藤匡、柴原祐一
音楽:桶狭間ありさ
主題歌:tuki.「コトノハ」(月面着陸計画)
制作協力:ダブ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ottonimachigaiarimasen/
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