『夫に間違いありません』“聖子”松下奈緒を縛る家族という鎖 ラスト1分の衝撃が生む悲劇

『夫に間違いありません』ラスト1分の衝撃

 『夫に間違いありません』(カンテレ・フジテレビ系)第3話では、主人公の生い立ちが描かれた。

 聖子(松下奈緒)は、瑠美子(白宮みずほ)に口止め料として500万円を払うが、瑠美子はさらに金を要求。一樹(安田顕)と通じて、保険金を自分のものにしようと画策する。一樹は瑠美子から「借金から逃げたいだけで、後先考えず逃げ出しただけ」と見透かされていた。一樹が抵抗するそぶりを見せないのは、秘密を握られているためでもあった。

 最初に触れておくと、第3話の週タイトルは「衝撃のラスト1分!破綻し始めた嘘」になっており、ラスト1分で何かが起きることが予告されていた。制作側の「最後まで観てほしい」というメッセージだと思うが、第3話ラストで起きたことは、ひそかに主人公と夫を応援していた視聴者をどん底に突き落とすものだっただろう。

 なぜ聖子が夫の言いなりになって、要求どおり金を渡すのかというと、そこには聖子自身の生い立ちが影響していた。聖子の家族関係に何かあることは、弟の光聖(中村海人)の言動からも察せられたが、詳細が明かされたのが第3話だ。聖子の家は、父親が事業に失敗して失踪し、母親が病死。幼い姉弟は親戚に引き取られた。一家離散を経験した聖子にとって、家族は特別なものだったのだ。

 しかし、それは聖子自身を縛る鎖にもなる。父を失った聖子には夫の存在が重要で、どんな姿でも夫の一樹が生きていることが家族の幸福に直結していた。たとえそのために罪を犯すとしても。家族を壊したくないという気持ちがブレーキになって、夫を止められず、悪事に手を染めてしまう。聖子のキャラ造形のコアに家族があるのだ。

 また、子どもの存在は聖子の中で大きな位置を占めていて、長男の栄大(山﨑真斗)の進学費用を得ることも保険金を着服する動機になっていた。一方で、子どもたちは、聖子の良心をつなぎとめてもいた。ライバルの藤木(二井景彪)から聖子が隠しごとをしていると聞いた栄大は、聖子に直接問いただす。亜季(吉本実由)を探して、紗春(桜井ユキ)に「嘘は子どもを傷つける」と言われた聖子は、子どものためにまっとうな人間でいようと思ったのではないだろうか。

 自分を罰する聖子は赦しを求めている人かもしれなくて、「親と子は別の人間だし、わからないことだってある」という紗春の言葉に救われたような表情を見せていたのが印象的だった。

 今作は、主人公が手を汚す物語である。改心して正しい道に戻ろうとすると、邪魔が入って新たな罪を重ねる構図だ。聖子は、子どもたちに真実を告げて警察署へ向かうが、自首する寸前に一樹から着信が入る。

 自首をするために警察に行ったら、夫から人を殺してしまったと連絡があり、その横で通報を受けて警察が出動する。これが衝撃のラスト1分である。この状況で自首しますかと問われたら、あなたはどう答えるだろうか。運が悪いことに、聖子が自首する前に夫から連絡があり、このまま自首すれば一樹の殺人も自供する流れになる。正しい道に戻るハードルが上がって、まっとうな人生が遠ざかっていくのはどんな気持ちだろうか。

 ドロドロとしたサスペンスを予想していたら、特濃の悲劇がぶち込まれる今作だが、人間の業をこれでもかと抉り取る筆致は、同じカンテレ制作の『あなたを奪ったその日から』(カンテレ・フジテレビ系)にも通じる。叙情味を帯び、感情を揺さぶる独特のトーンは独自のカラーである。登場人物を自分に置き換え、日常で経験しないシチュエーションを想像することで、より深く堪能できるタイプの作品だと思う。

『夫に間違いありません』の画像

夫に間違いありません

川で発見された遺体を、「行方不明になっている男性に間違いない」という親族の証言を受けて引き渡したが、後日その男性が帰宅したことで、“遺体の取り違え”が発覚したという衝撃的な事件に着想を得たサスペンスドラマ。

■放送情報
『夫に間違いありません』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:松下奈緒、桜井ユキ、宮沢氷魚、中村海人、松井玲奈、山﨑真斗、吉本実由、白宮みずほ、大朏岳優、二井景彪、磯村アメリ、前川泰之、朝加真由美、余貴美子、安田顕ほか
脚本:おかざきさとこ
演出:国本雅広、安里麻里、保坂昭一
プロデューサー:近藤匡、柴原祐一
音楽:桶狭間ありさ
主題歌:tuki.「コトノハ」(月面着陸計画)
制作協力:ダブ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ottonimachigaiarimasen/
公式X(旧Twitter):@ottomachi_ktv
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