『ばけばけ』は“全ての人たち”に向けて作られた朝ドラ サワを“主人公”として描いた意味

NHK連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『ばけばけ』が2026年に入り折り返し地点を迎えたが、野津サワ(円井わん)に焦点を当てた第16週、第17週は、目が離せない内容だった。
本作は明治時代を舞台に『怪談』の著者として知られる小泉八雲ことラフカディオ・ハーンとその妻・小泉セツ夫婦をモデルとした、レフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)と松野トキ(髙石あかり)の物語だ。
旧松江藩士族だった松野家は、時代が明治に変わったことによって時代に置き去りにされ、父親の司之介(岡部たかし)が事業に失敗したことで多額の借金を抱えていた。物語前半は、借金返済に苦しむ松野家の姿がこれでもかと描かれるのだが、物語のトーンは哀しくも優しくユーモアに満ちている。

それは映像に強く表れている。本作を観て一番に印象に残るのは暗闇の映像だ。その暗さは明治時代の暗闇を描くために選択されたものだが、夜だけでなく日中の明るい場面も霧の中にいるような薄ぼんやりとしたものとなっている。この薄ぼんやりとした映像を観ていると、暗闇や光の中に人知を超えた何かが存在し、トキ達のことを優しく見守っているかのように思えてくる。
物語が中盤に入ると、トキは外国人教師・ヘブンの女中となったことで高給をもらい、生活が安定する。朝ドラは、偉人の妻に焦点を当てた物語が定期的に作られており、この『ばけばけ』も作家の妻となった女性の物語である。そのため、どれだけトキに困難が訪れようとも、最終的にヘブンと結ばれ幸せになるというルートが見えており、だからこそ辛い展開が続いても安心して観続けることができた。

ヘブンと結婚したことでトキと松野家の人々は長屋を出て、豊かな暮らしができるようになる。そして、新聞記者の梶谷吾郎(岩崎う大)が松野家の日常を新聞に書いたことで大衆の注目を浴びる有名人となっていく。
トキたちは今風に言うとセレブのようで、プライベートが大衆に筒抜けとなっている様子はリアリティショーを観ているかのようだ。新聞を通して外国人のヘブンと結婚したトキを面白がり無邪気に消費する人々の目線はどこか残酷で、暗闇の奥から感じる優しい目線とは真逆のものだ。同時に彼らの姿は、貧乏だが明るく楽しそうに生きるトキたち松野家の日常を、無邪気に面白がっていた私たち朝ドラ視聴者の姿と重なる所があり、どうにも居心地が悪い。その後ろめたさもあり、トキたちに対する気持ちが少し遠くなるのだが、同じようにセレブ化したトキに対し、複雑な感情を抱いているのがトキの親友・サワである。






















