濱正悟、『ばけばけ』で引き出された初めての“顔” 「居心地が良くて集中できる環境でした」

濱正悟、朝ドラで引き出された初めての“顔”

 小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の妻・小泉セツをモデルにしたNHK連続テレビ小説『ばけばけ』。ヒロイン・松野トキ(髙石あかり)を取り巻く松江の人々の中で、ひときわ実直で、どこか放っておけない愛らしさを放っているのが、松江中学の英語教師となる庄田多吉だ。演じるのは、近年映像作品への出演が途切れず、その存在感を増している濱正悟。第85回でのプロポーズシーンも大きな話題となった彼に、撮影の裏側や共演者とのエピソード、そして30代を迎えて感じる役者としての変化についてじっくりと話を聞いた。

告白シーンは「カッコよく決めようと思っていたんですけど……」

ーーまずは本作への出演が決まった時のお気持ちから教えてください。以前、大阪制作(BK)の連続テレビ小説『舞いあがれ!』(2022年度後期)にも出演されていましたね。

濱正悟(以下、濱):『ばけばけ』が発表されたときから、いち視聴者として楽しみにしていたので、漠然と「出たいな」という思いはあったんです。まさか機会をいただけるとは思っていなくて嬉しかったです。『舞いあがれ!』以来、約3年ぶりのBK制作の朝ドラということで、顔なじみのスタッフさんがたくさんいらっしゃったのも大きかったですね。撮影初日から、僕の性格を分かっているスタッフさんが現場でいじってくださったりして(笑)。おかげで最初からキャストやスタッフの皆さんとも打ち解けられて、リラックスして現場に臨めました。あと、BKのスタジオ撮影の日にはみんなで出前を取ってご飯を食べることが多いんですが、僕がカレー好きというのを覚えてくださっていて、カレーにしてくれることが多くて(笑)。そんなふうに和やかな空気を作ってくださったことに感謝しています。

ーー第85話では、庄田が想いを寄せるサワ(円井わん)へのプロポーズシーンが描かれました。かなり緊張感のあるシーンでしたが、振り返っていかがでしたか?

濱:時間を重ねた上で臨めたので、それまでのことを思い巡らせながら演じました。カッコよく決めようと思っていたんですけど……結局、すごく緊張しました(笑)。夕方の少し暗いサロンで二人きりというシチュエーションも相まって、手が反り返るくらい緊張していたのを覚えています。台本に「急いで息が上がる」と書いてあったんですが、セットの動線が狭くて実際には走れないので、息を止めて現場に入ったんです。そうしたら思いのほか本番までに時間がかかって、本当に息が上がってしまって。あの必死に水を飲むシーンはかなりリアルな姿ですし、水を飲むという動作自体も、間を埋めるためのアドリブ的な動きでした。

ーー庄田の「初々しさ」がとても印象的でした。

濱:庄田多吉という役には「初々しさ」が大事だと思ったんですが、それは作ろうとして出せるものじゃないなと。変に用意していかず、その場の「初めて」を大切にしようと思って演じました。結果的に断られてしまうわけですが、彼は学問に関しては優秀でも、恋に関しては全く器用ではない。帰り道も、自分のショックより「サワさんに何かあったのかな」と相手を慮っていたんじゃないかと思います。そういう、他人がどう思うかを考えられるところが彼の良さだと思います。

ーー錦織(吉沢亮)との関係性も絶妙です。濱さんは二人の関係をどう捉えていますか?

濱:良き友人であり、「戦友」みたいな感じだと思っています。ただ、錦織は本当に天才で盤石な存在。多吉は優秀だけど一番にはなれない。嫉妬というよりは「尊敬」に近い感情を持っています。実は錦織とのシーンって、仲良く話すというより、「気まずい」シーンが多いんですよね(笑)。現場でも吉沢さんとカットがかかった後、「なんか気まずいね」「こういう感じだよね」と話していました。めちゃくちゃ居心地が良いわけでも悪いわけでもない、一言では表せない複雑な関係性ですね。

ーートキとヘブン(トミー・バストウ)の夫婦については、どう感じていましたか?

濱:もう一人の視聴者に近い感覚で見ていました。「かわいらしいし、まっすぐだし、この二人なら大丈夫なんだろうな」って、応援したくなる二人ですよね。第84話で二人の家に行って「本当はどうなんですか?」と詰め寄るシーンがありますが、実は「本当に、本当に本当です」と言うまでが台本で、そこから先はアドリブだったんです。なかなかカットがかからなくて(笑)。僕がどうしていいか分からずあたふたしている顔が結構長く使われていて、映像を見て「自分ってこういう時こんな顔になるんだ」と発見しました。

ーー英語教師役ということで、流暢な英語も披露されています。準備は大変でしたか?

濱:実は最初、見切り発車でオンライン英会話を始めてみたんです。でも、現場で英語指導の先生に聞いたら「あの時代の喋り方とは違う」「今っぽい略し方はしない」と言われてすぐやめました(笑)。現場で学ぶのが一番だなと。練習はかなりしました。ただ、覚えすぎて気持ちが入らなくなってもいけないのでバランスが難しかったです。最終的に現場で話したのは「発音の上手さよりも、伝わるか伝わらないかが一番大事だよね」ということ。教師役とはいえネイティブではないので、コミュニケーションを取ろうとする姿勢を大切に演じました。

ーー今回の現場では、ご自身のお芝居をチェックする「モニター」をあえて見ないようにしているそうですね。

濱:そうなんです。最近はチェックのモニターを全く見ないようにしています。見ると「あそこはもっとこうすればよかった」と粗探しをして引きずってしまうことも多いですし、それよりも忘れて次の芝居に集中する方がいいなと思って。見ないようにすると、逆に完成した作品を観るのが楽しみになるんです。今回の『ばけばけ』も、自分でも「あ、こんな顔をしていたんだ」と思うような、新しい顔になっていたなと感じました。

ーーそれは、想定していた以上のお芝居や演出が現場で生まれたということでしょうか?

濱:そうだと思います。演出チーム、キャストの皆さんに引き出していただいた表情だったんじゃないかなと。『ばけばけ』の現場はライティングも少し暗めで、映画のような雰囲気がありました。僕は暗い場所が落ち着くタイプなので、すごく居心地が良くて集中できる環境でした。

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