生田絵梨花、『風、薫る』でついに朝ドラへ 『レミゼ』ほかミュージカルで磨いたキャリア

生田絵梨花がミュージカルで磨いたキャリア

 生田絵梨花が、2026年度前期のNHK連続テレビ小説『風、薫る』で朝ドラに初出演することが発表された。ミュージカルで培ってきた表現力を思えば、いつか朝ドラに出演する日が来る——そう感じていた人も少なくないだろう。演じるのは、主人公たちと同じ看護婦養成所で学ぶ玉田多江。優等生気質で意識が高いがゆえに周囲と衝突し、家族内に“とある事情”を抱えて入所するという、硬質さと脆さを併せ持つ人物だ。本人も「いつか朝ドラに出演したいと願っていた」と胸の内を明かしており、その言葉の通り、長年の目標がついに形になった。(※)

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 生田絵梨花と聞いて、まず乃木坂46時代を思い浮かべる人もいるだろう。ただ近年の彼女を見ていると、その印象を上書きしてくるのは、ミュージカルの舞台で鍛え抜いてきた表現力だ。大きな劇場で培った呼吸や言葉の精度が、映像作品でも確かな説得力になっている。生田は『モーツァルト!』のコンスタンツェ、『ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』のナターシャで第44回菊田一夫演劇賞を受賞している。ここで重要なのは、「アイドルが舞台に挑戦した」という物語以上に、舞台の現場が彼女を実力で認めたという事実だろう。ミュージカルは、歌が上手いだけでは成立しない。台詞の延長として歌が始まり、歌の余韻が沈黙へ落ちるまで、感情を途切れさせずにつなぐ必要がある。生田はその難しさを、主演・ヒロイン級の現場で何度もくぐり抜けながら身につけてきた。

 近年の生田を語るうえで、『レ・ミゼラブル』は外せない。2017年・2019年にコゼット、2021年にエポニーヌ、そして2024〜2025年公演ではファンテーヌを演じてきた。同じ作品のなかで、娘としてのまっすぐさや報われない恋の切実さなど、まったく違う人生の温度を渡り歩いているのが興味深い。役替わりの面白さは、単に「別の役もできる」という話ではない。役が変わるたびに、歌が背負う感情の質も変わり、それにあわせて生田の表現も少しずつ深くなっていく。コゼットの透明感、エポニーヌの痛み、ファンテーヌの諦めと誇り。どの役でも共通しているのは、声の強さで押し切らず、言葉を丁寧に立てたうえで感情をにじませる粘り強さだ。

 近年は映像作品でも活躍の幅を広げており、『PICU 小児集中治療室』(フジテレビ系)で演じた涌井桃子は、その持ち味が最もわかりやすい。感情を大きく見せて訴えるのではなく、言葉を飲み込む間や視線の置き方で、相手との距離が少しずつ変わっていくのが伝わってくる。『オールドルーキー』(TBS系)では、自由人の軽やかさの奥に、家族の本音を受け止める芯の強さを抱えているグルメライターの糸山留美を好演。映画『Dr.コトー診療所』では、診療所で働く看護師・西野那美を演じ、張り詰めた医療の空気を、過剰な感情表現ではなく、動きの速さや視線の確かさで支えている。舞台で鍛えた技術が、映像ではむしろ説得力として表れているのだ。

 直近の作品で言えば、『素晴らしき哉、先生!』(ABCテレビ・テレビ朝日系)は、生田の等身大の説得力がはっきり示された作品だった。生田が演じたのは、新人教師の笹岡りお。前向きに頑張ろうとしながらも、仕事に追われて余裕を失い、思わず愚痴をこぼしてしまうという、現実的な“しんどさ”を抱えた人物である。生田の芝居が効いているのは、感情を大きく見せる場面よりも、むしろその手前にある瞬間だ。元気なふりをするとき、言い訳で取り繕うとき、ふと本音が漏れるとき。そうした揺れを、過剰な表情や声量に頼らず、表情のわずかな変化や間合いで積み重ねていく。りおの「ちゃんとやりたいのに、うまくできない」という感情が、毎話少しずつ蓄積されていくからこそ、視聴者も無理なく寄り添うことができる。舞台で鍛えた表現力が、連続ドラマの中で生活のリアルとして機能したドラマだった。

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 そう考えると、『風、薫る』の多江は、生田にとってハマり役になりそうだ。真面目で成績もいい、いわゆる優等生タイプ。だからこそ正しいことを言い過ぎてしまい、周りとぶつかることもある。一方で、家族の事情を抱えているぶん、弱音を見せないように自分を固くしている部分もあるだろう。朝ドラは、こうした人の硬さが少しずつほどけていく過程を丁寧に追える。強がりがほどけたり、言葉に迷ったりする場面が重なるほど、多江の人となりが少しずつ見えてくるはずだ。生田が舞台で磨いた言葉の精度と、映像で見せてきた等身大の説得力は、まさにこの役に向いている。

 生田はミュージカルで磨いた言葉と呼吸の技術を土台に、ドラマや映画でも役にあわせて芝居の質感を変えてきた。『風、薫る』は、その演技が毎朝の物語の中で多くの人に伝わっていく舞台になるはずで、生田の日常の中に自然に馴染んでいく説得力が存分に堪能できるだろう。毎朝の15分の中で、生田の芝居を観られるのが楽しみだ。

参照
https://realsound.jp/movie/2026/01/post-2292350.html

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、2026年春~放送
出演:見上愛、上坂樹里、生田絵梨花、菊池亜希子、中井友望、木越明、原嶋凛、玄理、伊勢志摩、研ナオコ
作:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春 橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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