杉咲花×倉悠貴、極上の3分50秒 『冬のなんかさ、春のなんかね』の些細な時間が愛おしい

1月28日に放送された『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)第3話は、前2話に引き続き今泉力哉の脚本のもと、監督は新たに山下敦弘へとバトンタッチする。映画――とりわけインディペンデント系の日本映画を観ている層にとっては、この両者の名前が同じ作品のクレジットに並ぶだけで妙に胸が躍るものがある。しかもそれを、深夜帯のドラマではなくプライム帯に観られるとは。
両者は山下が『リンダ リンダ リンダ』を撮った20年ほど前に知り合い、その後今泉が山下のワークショップを手伝うなど親交があることで知られている。もとより今泉自身、山下の作品から多大な影響を受けたことを公言しており、両者それぞれの作品を思い返してみれば、作品のタッチや空気感、人物の描き方や人物とカメラの距離感など、非常に似たものを感じる。ゆえに、今回のコラボレーションがうまくハマらないはずがない。

年末年始を使って富山に帰省する文菜(杉咲花)。弟の拓也(林裕太)が車で迎えにきて、久々に帰ってきた実家で仏壇に手を合わせる。早速その夜、文菜は高校時代の同級生たちとのちょっとした同窓会の時間を楽しむ。遅れてやってきたのは、高校時代に交際していた柴咲(倉悠貴)。互いの近況報告や、同級生たちが持ってきた文菜の著書へのサイン会。そして二次会で行ったカラオケでは、文菜と柴咲が別れた理由についての話題で持ちきりとなるのだ。

この二次会の帰り道のシーンが実に興味深い。照明だけが煌々とついた状態で寝静まった商店街を皆でぞろぞろと歩くという、地方都市を舞台にした青春ドラマの定番ショットを経て、「話がある」という柴咲に誘われて2人きりになる文菜。漁船が係留された運河沿いの道をゆっくりと並んで歩きながら、ざっと3分50秒間。カットが一切割られることなく、2人の何気ない会話が重ねられていくのである。

高校時代に遠距離恋愛になることに臆して文菜との別れを選んだ柴咲が、今度は自らの転勤によって恋人と遠距離恋愛になるかもしれないという話。そんな柴咲の現在の恋人が美容師で、文菜の恋人――ゆきお(成田凌)も美容師なので、「髪を切ってもらえる」と小さく盛り上がる。今回の遠距離恋愛はきっと大丈夫だと話す柴咲が、文菜の幸せそうな姿に安堵する様。同窓会のなかで仲間内でしていたやり取りの断片が、元恋人同士である2人だけのものに昇華していき、結局は同窓会の二次会と同じ、「タイミング」という一語に帰結する。
この一連の後日、文菜は再び柴咲に呼ばれてファミレスで対話することになる。基本的に映画でもドラマでも、遠方に赴くシーンがあれば何か物語が動くきっかけになることが多い。とはいえこのドラマの場合は例外。極端な言い方をすれば、富山の実家にちょっと行って帰ってきた、それだけのエピソードなのである。そこに「何かが変化する」とか「何かを変化させる」ことは必要ではなく、些細な時間を過ごした結果として、「何かを確認した」。それだけで充分なのだ。
小説家で古着屋バイトの主人公・文菜は、過去の経験から恋人と真剣に向き合うことを避けていた。そんな文菜が自分の恋愛を見つめ直していく。演出には、映画監督の山下敦弘と山田卓司も参加している。
■放送情報
『冬のなんかさ、春のなんかね』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00~放送
出演:杉咲花、成田凌、岡山天音、水沢林太郎、野内まる、志田彩良、倉悠貴、栁俊太郎、細田佳央太、内堀太郎、林裕太、河井青葉、芹澤興人
脚本:今泉力哉
監督:今泉力哉、山下敦弘、山田卓司
音楽:ゲイリー芦屋
主題歌:Homecomings 「knit」(IRORI Records / PONY CANYON)
プロデューサー:大倉寛子、藤森真実、角田道明、山内遊
チーフプロデューサー:道坂忠久
制作協力:AX-ON、Lat-Lon
©日本テレビ
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