『冬のなんかさ、春のなんかね』内堀太郎は何者? 今泉力哉に起用された理由に迫る

杉咲花が主演を務めるドラマ『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)が、初回の放送直後から大きな話題を呼んでいる。脚本を手がけているのは、恋愛映画の名手として数々の話題作を発表し続けてきた今泉力哉監督。彼がテレビドラマのフォーマットで描くラブストーリーは等身大でありながら、いや、等身大だからこそというべきか、多くの視聴者の心をざわつかせているらしい。そんな本作の話題性をより高めているのが、やはり俳優たちの演技だ。中でも内堀太郎の存在が際立っている。
本作は、27歳の主人公・土田文菜(杉咲花)の日常と心の機微を描く恋愛ドラマ。小説家である彼女は、古着屋でアルバイトをしながら新作を執筆中だ。現在は恋人がいるものの、これまでの経験から、“きちんと人を好きになること”や“きちんと向き合うこと”を避けてしまいがち。そんな文菜と接点を持つ男性のひとりが、内堀が演じる山田線である。
この山田という人物は、文菜の先輩小説家であり、彼女が恋人にも話せないことを話すことができる特別な存在。飲食をともにしたり、ホテルで会ったりなどしている。ふたりは非常に特別な関係性なのである。

本作のあらすじと山田というキャラクターについて簡単に記してみたが、たったこれだけの情報でも、この物語にとって彼がどれだけ重要な存在なのか理解していただけるだろう。彼はこのドラマにおいて主要人物のひとり。演じる者は、それ相応の演技者でなければならない。だが大半の視聴者は、本作ではじめて内堀の存在を認識することとなった。そして誰もが驚いている。その自然な佇まいと、特異な魅力に対して。
たしかに私も、ドラマ作品で彼を見かけたことはない気がする。でもだからといって、彼は「新人俳優」ではないし、あまり目立たない役どころだったとしても、いくつもの映画作品に出演してきた。今泉監督の快進撃のはじまりを告げる一作となった『退屈な日々にさようならを』(2017年)では作品の中心に立ち、一人二役で物語を牽引している。今回の『冬のなんかさ、春のなんかね』への出演は、今泉監督たっての希望だったことを、番組公式サイト内のインタビューで明かしている(※)。
それにしても、今泉監督のアクションは素晴らしい。映画であれば、興行の数字的な良し悪しよりも、作り手の作家性を押し出すことを一番に考えている製作陣もいる。そういった作品では、作家がもっとも力を発揮できる俳優が採用される。しかしテレビではそうもいかない。どうしたって数字が物を言う世界だ。必然的に主要キャストは誰もが知る存在で固められていくことになる。

けれどもそうしたキャスティングはあくまでも“ベター”なものであって、“ベスト”なものではない。と、ここで断言しておきたい。一つひとつの作品に登場する一人ひとりのキャラクターごとに、これを演じるべき俳優がいる。『冬のなんかさ、春のなんかね』において山田線を演じるべきなのは、内堀太郎だったのだろう。この必然性が、放送後の反響にもつながっているのだ。
本作はテレビドラマのフォーマットで描かれるものだが、今泉監督の作品のファンならば、彼の作品だと知らずに観てもすぐに気がつくに違いない。文菜をはじめとする個々のキャラクターは、独自のリズムとペースを持っていて、セリフの掛け合いのトーン、間合い、そしてこれらが醸し出す作品の空気が、これまでの今泉作品と通底している。そしてそこに、今泉作品のエッセンスに触れたことのある内堀が加わったことで、さらに本作は高い強度を得ているわけだ。

内堀の気取らぬ振る舞いと穏やかで流麗なセリフ回しに魅せられているうち、気がつけば私たちは劇中の居酒屋の隣席に座していたりする。そう、思わず隣の席を選んでしまうほど、“山田線=内堀太郎”は私たちにとって身近な存在だ。これは内堀がまだあまり知られていないからこそ実現できているものだろう。彼がこのポジションに立っている事実は、その力がたしかなものであることの証左にほかならない。この必然に、私たちはいま立ち会っている。知られざる優れた俳優のユニークな動きを注視していきたいものだ。そしてここから、彼の次なるステップが見えてくるはずである。
参照
※ https://www.ntv.co.jp/fuyunonankasa/articles/5184be8bajvfe8jbk7zl.html
小説家で古着屋バイトの主人公・文菜は、過去の経験から恋人と真剣に向き合うことを避けていた。そんな文菜が自分の恋愛を見つめ直していく。演出には、映画監督の山下敦弘と山田卓司も参加している。
■放送情報
『冬のなんかさ、春のなんかね』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00~放送
出演:杉咲花、成田凌、岡山天音、水沢林太郎、野内まる、志田彩良、倉悠貴、栁俊太郎、細田佳央太、内堀太郎、林裕太、河井青葉、芹澤興人
脚本:今泉力哉
監督:今泉力哉、山下敦弘、山田卓司
音楽:ゲイリー芦屋
主題歌:Homecomings 「knit」(IRORI Records / PONY CANYON)
プロデューサー:大倉寛子、藤森真実、角田道明、山内遊
チーフプロデューサー:道坂忠久
制作協力:AX-ON、Lat-Lon
©日本テレビ
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