松山ケンイチ×鳴海唯の絶妙なかけ合い 『テミスの不確かな法廷』が問う“正義”の判断

『テミスの不確かな法廷』が問う正義の判断

 『テミスの不確かな法廷』(NHK総合)第2話の副題は「真実義務と誠実義務」。弁護士の小野崎(鳴海唯)が、真実を明らかにする“真実義務”と依頼人の利益を守る“誠実義務”の狭間で揺れ動きながらも、自分が信じた正義で「よし」と思える結果を導き出した。

 名門私立高校に通うバスケ部員の栗田奈央(山時聡真)が傷害および窃盗教唆の罪で検察に起訴され、安堂(松山ケンイチ)が担当する裁判に出廷する。栗田は半年前から集団で窃盗を繰り返しており、そのことを知った他校の卒業生・八木一喜(柾木玲弥)を突き飛ばし、意識不明の重傷を負わせた。栗田を弁護することになった小野崎は正当防衛だったという本人の言葉を信じて、無罪を主張。今回は八木一喜が栗田奈央に殴りかかるのを3人が目撃しており、弁護側が有利な状況だ。

 ところが、またしても安堂の特性によるこだわりが事件の矛盾をあぶり出す。気になったことは調べずにいられない安堂が不審者に間違われながらも、事件現場で調査したところ、目撃者が嘘をついている可能性が浮上。だとしたら、何のために?

 そしてもう一つ、安堂が違和感を抱いたのは「遊ぶ金欲しさに」という集団窃盗に至った栗田の動機だ。小野崎もまたいくつか気になる証言を得て、執行官の津村(市川実日子)にも意見を求めた結果、窃盗事件の裏で生徒たちが違法賭博を行っていたことが明らかになる。栗田は自分自身でノミ屋の役割を担っていた。つまり仲間内での賭け事であり、誰かが外部に情報を漏らさない限り、罪に問われる可能性は低い。学校側もそのことを知っていながら、学校の名誉を守るために真実を隠し、賭博に関わった生徒にも箝口令を敷いていた。

 依頼人が自分に不利益な事実を隠していた場合、それを聞かなかったことにすれば真実義務に反する。しかし、その事実を明らかにすれば悪質性が高いと判断され、量刑がさらに重くなる可能性があり、今度は誠実義務に反することになる。弁護人としてどうするべきか答えが出せず、小野崎にふと安堂が語り出す。

「わからないことをわかっていないと、わからないことはわかりません。その上で真実義務と誠実義務。2つの義務が衝突した場合、どうするかは弁護人の裁量次第。司法修習で学んだことです」

 安堂が言っていることはシンプルだ。とことん真実を追求し、自らの正義に従って行動する。本来、小野崎はそうしていたのではないだろうか。「日本の刑事裁判は検察が起訴した時点で99.9%の有罪率。被告人の無実を信じて、全力を尽くしても救えない」と弁護士の悲哀をこぼした小野崎。それは裏返せば、彼女が「被告人を救いたい」と思っている証拠だ。かつて刑事弁護を中心にプロボノ活動(専門知識を活かした社会貢献活動)を行うほど、理想に燃えていた小野崎は現実の壁にぶつかって心を折った。理想と現実のギャップに打ちのめされた大人はいつしか自己保身に走り、同調圧力に屈するようになる。

 だが、目の前の不安と闘うのに精一杯で、門倉(遠藤憲一)の小野崎に関する陰口をそのまま本人に伝えてしまうほど、場の空気を読むのが苦手な安堂は、自己保身や同調圧力とは無縁だ。だからこそ、彼は社会の約束事に則って、まっすぐ真実と向き合い、公平に人を裁くことができるのではないだろうか。そんな安堂の言葉で、小野崎は初心に戻れたのかもしれない。意識が戻ったものの、あえて事件について口を閉ざしているように思える八木に「わからなさ」を覚え、2人の幼少期まで遡った小野崎は一つの真実に辿り着く。

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