『ストレンジャー・シングス』の“オマージュネタ”を総括 スピルバーグに『バフィー』も

もはや1980年代ブームの火付け役と言っても過言ではない『ストレンジャー・シングス 未知の世界』。配信された当初は、海外ドラマ好きの間での密かなブームでしかなかったというのに、今ではNetflixの看板作品として君臨するほどの存在感を放っている。

その存在感から、1980年代を舞台としたあらゆる作品には、いつしか『ストレンジャー・シングス』の影がチラつくようになってしまった。シーズン2の第2章「変わり者たちのハロウィン」では、『ゴーストバスターズ』のコスプレをするシーンがあったが、マイク役のフィン・ヴォルフハルトは実際に『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2021年)でゴートバスターズとして活躍することになった。明らかにメタ意識した作品もあったりで、常にそのイメージが世界のエンタメを刺激し続けていることがわかる。変わり種でいうと、2023年に出版された『ミュータントタートルズ』とのクロスオーバーコミック『Teenage Mutant Ninja Turtles x Stranger Things(原題)』もある。
そんな『ストレンジャー・シングス』も、いよいよシーズン5をもって完結。ところがすでに2026年にアニメシリーズも配信予定で、ナンシーを主人公とした小説も企画されていたりと、まだまだ『ストレンジャー・シングス』ユニバースは、拡張を続けていくようだが、とりあえず本シリーズは完結となる。……はずだ。
シーズン5は、現在第1~第4章が配信されており、12月26日に第5~第7章、そして最終章は拡大版として2026年1月1日に配信される。ちなみにアメリカの一部の劇場では最終章が劇場公開されるようだ。

長寿ドラマでよくあるのが、はじめから観ていると、まるで子どもの成長を見守るような感情移入をしてしまうこと。シーズン1の第1話はテーブルトークRPG『D&D』こと『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を子どもたちがプレイしているところから始まることもあり、あの頃の平和な時期には戻れないもどかしさはシーズンを増すごとに強くなるばかり。最終章のラストカットは、それと同じ画でハッピーエンドに終わることを願うばかり。
『D&D』が全シーズンを通してストーリー展開の下敷きとなっており、クリーチャーたちの名前もそれになぞられたものだ。『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』のように、たびたび『D&D』をネタにするドラマはあるものの、ここまでストーリーから影響を感じる作品も珍しい。

それに加え、主人公たちがオタクでセリフのおもしろさも際立っているし、随所に様々な1970~1980年代映画のオマージュもちりばめられている。例えば『E.T.』(1982年)や『未知との遭遇』(1977年)や『ジョーズ』(1975年)などのスピルバーグネタ、シーズン4からは精神面での闘いも多くなってくることから、ホラーやスラッシャー映画のネタも多く入るようになってくる。1980年代を活かしたアーケードゲームやビデオ、カセットテープ、コミックなどのノスタルジックなアイテムがエモーショナルで多くのファンを増やした。
ホラーは常に社会を反映しているともいわれているが、今作も1980年当時にあった社会的文脈も強く反映されている。例えば冷戦期の不安、家族像の変化や消費主義などが挙げられる。そういった1980年代の社会やカルチャーに見立てながら考察していくものが世に溢れかえっているが、海外ドラマを30年以上観続けている筆者の少し違った視点からいうと、ある作品との共通点の多さに気づかずにはいられなかった。以前からその要素はあったものの、シーズン4~5にかけての展開で確信に変わった。
それは『バフィー 〜恋する十字架〜』(ディズニープラス配信タイトル名『吸血キラー/聖少女バフィー』)だ。舞台となっているは1990~2000年代と時代背景はまったく異なるが、全体的な構成が酷似しているのだ。今でこそLGBTQ+を取り入れたり、それが主題になる作品は多く存在しているが、当時はまだ珍しく、大人が子どもに見せたくないドラマとしても話題になった作品だ。
例えば裏側の世界への入口がホーキンスという小さな町に集中していること。これは『バフィー』のなかでいうと、サニーデールという町に“地獄の口”、つまり地獄と繋がるゲートが存在しており、そこから悪魔やクリーチャーが通って現れる。『スーパーナチュラル』のなかにも“デビルズ・ゲート”、『リバーデイル』でいうと“リバーベイル”のように、小さな町のなかに別世界の入口が存在している作品はいくつかあるし、それらの要素に気づいている人も多いと思うが、その原点は『バフィー』なのだ。




















