『ストレンジャー・シングス』の“オマージュネタ”を総括 スピルバーグに『バフィー』も

『ストレンジャー・シングス』オマージュネタ

 マインド・フレイヤーの役割も『バフィー』の最強最悪な存在“原初の悪(ファースト)”であり、オタク知識やポップカルチャーを例に戦略を立てていくこと、スクールカーストの垣根を越えて信頼と友情を築いていくのも酷似している。

 『ストレンジャー・シングス』シーズン4で登場するシリーズ史上最強の敵ヴェクナは過去のトラウマを利用し、内側の精神を破壊することで外側の肉体を破壊する能力や行動を操る能力を持っている。名前の由来は『D&D』の闇の魔術師で、能力的には『エルム街の悪夢』のフレディ・クルーガーを連想させるし、実際に第5話のなかでもフレディの能力と比較するセリフがあった。フレディ役で知られるロバート・イングランドがキーキャラクターとして登場していることでオマージュだと感じさせる材料は揃っているし、実際にそうでもあるのだが、ヴェクナの能力も『バフィー』のファーストそのものだ。

 そしてシーズン5に入ったことで、より共通点を見出さずにはいられない。ナンシーやスティーブといった、予想外のサブキャラクターたちの成長と役割の変化から“『ストレンジャー・シングス』は『バフィー』のリブート”、“1980年代版『バフィー』だった!”という意見が海外では飛び交うことになり、キャラクターの立ち位置を比較したり、マッシュアップ動画も多く出回っている。それが日本でも出回っていないのは、単に『バフィー』の知名度が関係しているのだろう。観れば納得できるはずだ。

 「ホーキンスなんて呪われた危険な町から離れればいいのでは?」という疑問が発生してくるし、『バフィー』や『リバーデイル』など、怪奇現象が多発する町を舞台にしたのでは定番ネタだ。実際にバイヤーズ家とエルはレノーラヒルズに引っ越していたが結局戻ってきてしまう。これは運命の引力みたいなもので、引き寄せられてくるし、離れられない。説明的ではなく、自然にそれが映像として感じさせてくるのもシーズン4~5にかけての特徴だ。

 ちなみにシーズン5でジョイスが斧を印象的に使うシーンがある。ジョイスはシーズン1でも斧を使うシーンがあり、これは『シャイニング』(1980年)のオマージュとみられることが多いが、実は『バフィー』のファイナルシーズンのキーアイテムも斧なのだ。偶然にもジョイスはバフィーの母親の名前だ。『ストレンジャー・シングス』のジョイスほど戦闘能力は強くないが、立ち位置は似ている。

 直接的に意識しているのか、あるいはそれらの派生作品を通して意識したものかは、実際に監督に聞いてみないとわからないものの、『テレビの中に入りたい』(2024年)の元ネタになっていたり、クロエ・ジャオの人生や作家性に大きな影響をもたらし、実際にHuluドラマとしてリブート版『バフィー』を制作中だったりと、今活躍している多くのクリエイター・マインドを刺激してきた作品であることは間違いなく、『ストレンジャー・シングス』を観れば観るほど、『バフィー』のスピリットが根付いていることを実感しないではいられなかった。

 ただ『バフィー』に似ていることは別としても魅力的な要素が多いからこそ、日本でも人気になっていることは間違いない。

 裏側の世界でウィルに何が起きていたかは、コミックシリーズ『ストレンジャー・シングス:裏側の世界』のなかでも描かれているが、シーズン5の第1章ではヴェクナも関わっていたことが明らかになるなど、メディアミックスな展開が頻繁に起こっているのもおもしろ要素のひとつだ。また様々なキャラクターが、自分の役割に気づきはじめ、それを全うするために運命が進み、クライマックスに向けて全てが繋がっていこうとしている。

 シーズン5から新たに登場した『ターミネーター』(1984年)のサラ・コナー役でお馴染みのリンダ・ハミルトンが演じるドクター・ケイの本当の目的や行方不明になっていた強力キャラクターとの再会、主要人物の新たな力の覚醒などなど……。“シーズン6の続きはコミックスで~”みたいな展開になりそうな気がしないでもないが、『ストレンジャー・シングス』という作品の着地点を見届けよう。

■配信情報
Netflixシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界 5』
VOL 1(第1~4話): 配信中
VOL 2(第5~7話): 12月26日(金)10:00〜配信
フィナーレ(第8話): 2026年1月1日(木)10:00〜配信
出演:ウィノナ・ライダー、デヴィッド・ハーバー、ミリー・ボビー・ブラウン、フィン・ヴォルフハルト、ゲイテン・マタラッツォ、ケイレブ・マクラフリン、ノア・シュナップ、セイディー・シンク、ナタリア・ダイアー、チャーリー・ヒートン、ジョー・キーリー、マヤ・ホーク、プリア・ファーガソン、ブレット・ゲルマン、ジェイミー・キャンベル・バウアー、カーラ・ブオノ、エイミーベス・マクナルティ、ネル・フィッシャー、ジェイク・コネリー、アレックス・ブロー、リンダ・ハミルトン

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