日高由起刀の演技が話題を呼び続けるワケ 『HAPPYEND』から『ばけばけ』へ続く軌跡

映画デビュー後、日高はテレビドラマの世界でも着実に歩みを進める。2025年前期の朝ドラ『あんぱん』では、ごく短い出演ながら朝ドラ特有の温かい空気に自然と溶け込む演技を見せた。モデル出身らしい柔らかな物腰で視聴者に爽やかな印象を与えつつ、その中にふと芯の強さをのぞかせるような芝居は、若手俳優ならではの魅力として印象深かった。朝の視聴者層にも違和感なく受け入れられたことで、日高の演技の幅の広さが示されたと言える。
続いて同年夏には、『僕達はまだその星の校則を知らない』(カンテレ・フジテレビ系)に出演。大森美香脚本のオリジナル学園ドラマである本作で、日高は3年生の生徒会長・鷹野良則役を務めた。男子校と女子校が合併した高校を舞台に、生徒たちの抱える様々な問題にスクールロイヤー(学校弁護士)の教師が向き合うという骨太な青春群像劇の中、日高演じる鷹野は生徒側のリーダーとして重要なポジションにあった。劇中では生徒会長でありながら校則変更をめぐって悩み、不登校にまで陥るという難しい役どころを担い、繊細な心情表現が求められた。日高はこのプレッシャーの大きい役に真摯に向き合い、若者ならではの葛藤や脆さをリアルに演じてみせた。
さらに『ESCAPE それは誘拐のはずだった』(日本テレビ系)には第2話からレギュラー出演を果たした。桜田ひよりと佐野勇斗のW主演によるサスペンス作品で、日高は捜査一課の若手刑事・田端春輝役を演じている。田端春輝は27歳のキャリア組刑事で、先輩刑事の小宮山(松尾諭)とバディを組み、誘拐事件の捜査に奔走する役どころだ。これまで高校生役が中心だった日高にとって、自身の実年齢より上の社会人役への挑戦となったが、持ち前の真摯さと熱量で若手刑事のフレッシュさを表現しつつ、シリアスな捜査劇に説得力を与えている。小宮山に振り回されながらも食らいついていく姿は初々しさと使命感が同居し、高い緊張感の中でも埋没しない存在感を示した。朝ドラで見せた柔和な学生像とは一転して、スーツに身を包み事件と向き合う姿からは役者としての新たな一面が感じられる瞬間だ。このギャップこそが日高由起刀という俳優の面白さであり、作品ごとに異なる表情を見せる彼の演技が視聴者を惹きつけてやまない理由なのだろう。

こうしたキャリアを経て臨む『ばけばけ』での清一という役柄は、前述のように秀才ゆえの知的な雰囲気と、年相応の幼さを併せ持つ複雑な人物だ。日高はその二面性を丁寧に掬い取り、コミカルな場面では軽やかさを、シリアスな場面では芯の通った強さを見せている。長身で端正な立ち姿から放たれる凛としたオーラと、内面の機微を丁寧に積み重ねていく繊細な感情表現が絡み合うことで、正木清一は物語の中で静かだが確かな存在感を示していくだろう。物語が進むにつれて、清一がどのように変化し、その過程で日高が見せるであろう細やかな感情の機微やダイナミックな演技の振れ幅に、大いに期待したいと思う。
『ばけばけ』という大舞台での挑戦は、日高にとって俳優人生の大きな節目となるに違いない。朝ドラという国民的な作品で得た経験は計り知れず、彼のキャリアにさらに厚みをもたらすはずだ。いずれも人生の折り返し地点にも至っていない世代の俳優たちが切磋琢磨する中で、日高由起刀がどのように存在感を発揮し、自身の可能性を広げていくのか。今後の活躍から目が離せない。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK























