『フェイクマミー』波瑠の名演光る薫の“自己犠牲” 悪役の“慎吾”笠松将とどう決着がつく?

誰かのための嘘を貫き通したのなら、それはもう本当と言えるのではないだろうか。
『フェイクマミー』(TBS系)がついに最終章へ突入。その前編となる第9話では、薫(波瑠)がいろは(池村碧彩)の“ニセママ”であることを公表し、警察に連行される。それは、茉海恵(川栄李奈)といろはを守るための優しい嘘だった。
まずはここに至るまでの流れを振り返っていきたい。茉海恵が薫に母親役を依頼し、隠し子のいろはを柳和学園に不正入学させていたとする記事が週刊誌に掲載される。学校にはマスコミや保護者からの問い合わせが殺到。だが、幸いにも証拠は出ておらず、茉海恵の会社といろはの夢を終わらせたくない薫は嘘を突き通すと決め、竜馬(向井康二)と智也(中村蒼)も賛同する。

依然として学校にはマスコミが張り込んでおり、好奇の目を浴びせられる薫といろはだが、逆風ばかりではなかった。意外だったのは、玲香(野呂佳代)たち“柳和の三羽烏”が全面的に味方になってくれたこと。何も事情を聞かず、少しでも薫が元気になるようにと食事を差し入れしてくれた3人の優しさが身に沁みる。
最初は母親に不要な負担をかける柳和会の伝統に反対し、玲香たちともぶつかってばかりだった薫。しかし、それは自分が楽をするためではなく、みんなのためであることを、あのキャンプの夜に彼女たちは気づいたのではないだろうか。だから、たとえ疑惑が本当であっても、それもきっとまた誰かのためであると信じているのだ。

子供たちもまたフラットに目の前のいろはを見ていた。興味本位で教室にやってきた上級生から、先頭に立っていろはを守った圭吾(高嶋龍之介)。いろはと薫の仲の良さを理由に「本物とか偽物とかどうでもよくない?」と言ってのける彼は、周りに流されず、自分の目で見たものを信じる力を持っている。
それは本来、学力よりも大事なことではないだろうか。虹汁を販売する旗艦店の店員・渚(浅川梨奈)が迷惑系配信者ともみ合いの末に怪我をし、店に駆けつけた茉海恵は智也と遭遇。慎吾(笠松将)の会社・三ツ橋食品によるRAINBOWLABの買収が正式に決まれば、社員の未来も危うく、「私って本当に浅はかで大馬鹿でどうしようもない」と自分を卑下する茉海恵に、智也が「それって言い換えれば、まっすぐでどんなことにも本気でいつも前に進もうとする。全部、茉海恵さんのいいところじゃないですか」と寄り添った。

表面的な情報を抜きにして、自分の内面や行動をまっすぐに見てくれている人がいる、それは希望だ。だが、その希望をことごとく潰しにかかってくるのが慎吾である。学校の理事会と柳和会の合同会議で釈明の場が与えられた薫は、何を聞かれてもいろはの本当の母親であることを主張し続けるつもりだった。しかし、慎吾がいろはに自分が父親であることを打ち明け、夜中に一人で彼女を呼び出す。その時点で子どものことを何も考えていないのは確定だが、茉海恵を自分の思い通りにするため、まずはいろはを手に入れようとする慎吾はさらなる愚行を犯した。
慎吾から本橋家の人間になれば、ニセママ騒動をなかったことにすると持ちかけられたいろは。それは交渉なんかではなく、いろはが提案を受け入れなければ、薫も茉海恵もただでは済まないという脅しだ。いろはは欲しいものを何でも与えてもらえるからという理由をつけ、本橋家に行くことを薫と茉海恵に告げる。でも、どれだけ忙しくても母親としていろはと一生懸命向き合ってきた茉海恵には、それが嘘であることはお見通しだった。茉海恵は「いろはのいない人生なんて、何の意味もない」と言うが、それはいろはだって同じ。綺麗なドレスを着られても、毎日フランス料理が食べられても、そこに茉海恵がいなければ意味がないのだ。そんな大好きな母親との日々を捨ててまで、2人を守ろうとしたいろはの覚悟を思うだけで胸が痛い。





















