波瑠×川栄李奈は実は似ている? 『フェイクマミー』の“きれいごと”だけにしない面白さ

『フェイクマミー』はなぜ面白い?

 金曜22時から放送中の『フェイクマミー』(TBS系)が面白い。本作は、正反対の人生を歩んできた2人の女性が、子どもの未来のために“母親のなりすまし”という禁断の契約を結ぶといった内容。なぜ、このドラマにここまで惹かれているのか、今回は改めて紐解いていきたいと思う。

 まずは、“偽ママ”として振る舞う東大卒の花村薫(波瑠)と元ヤン社長の日高茉海恵(川栄李奈)のキャラクター性だろう。

 この2人、紹介文では正反対とは言われているものの、根の部分では通じあっているものがある気がしている。

 例えば、何かを手に入れるために、何かを我慢するという思考がないこと。そして、価値観や育ってきた環境は違いつつも、決してお互いの思考を否定しない優しさ。なによりも“娘”いろは(池村碧彩)を大切に思う気持ちという点で繋がっている。

 結局のところ、2人が“母親のなりすまし”という犯罪に手を染めたのは、環境や生い立ちを言い訳に、いろはの夢へとつながる可能性が絶たれることを許せなかったから。もしも、いろはが通う柳和学園が、ここまで家柄や家族構成を気にしないのであれば、こんな犯罪に手を染めることもなかったはずなのだ。

 自分たちの正しさを守るために、正しくないことをやっている。その様子を見ていると、他に手法はなかったのか、そう考えてしまうのも無理はないが、彼女たちなりの正解が今の形なのだ。

 そして、2人はその真っ直ぐさ、不器用すぎるくらい正直な姿勢で、竜馬(向井康二)や智也(中村蒼)といった周りの人をも味方につけていく。

 ここまでの説明を見ると「そうか、やはり熱意をもって言葉を交わせば、人は分かり合えるんだ」――と思いたいところだが、このドラマがおもしろいのは、そんなふうに一筋縄ではいかないところにもある。ただきれいごとを述べているだけのドラマではないのだ。

 では、分かり合えない人とは誰なのか。それは、本来、薫が一番わかってほしい相手である、母・聖子(筒井真理子)である。聖子はどうしてもステレオタイプに縛られて、彼女の考えを理解しない。「東大まで卒業して……目を覚ませ」とややヒステリックに言うくらいだ。

 そんな聖子は、第8話の予告にも登場している。薫と茉海恵、そして聖子がどんな会話を交わすのか。それぞれの母親像の妥協点は見つかるのか。ひとつの見どころとなりそうだ。

 また、ドラマが始まる前に想像していたよりも、人間関係が非常に複雑なのも見逃せない。

 副社長・竜馬はてっきり、茉海恵のことが好きなのかと思いきや、第7話では涙を流す薫を抱きしめて慰める一幕も。これはただ単に同志だからなのか、それとも恋愛に発展するのかは今後の注目ポイントのひとつとなりそうだ。

 いろはの母の正体がバレるまではナチュラルにいい感じだった智也と茉海恵というカップリングもあれば、いろはの本当の父である慎吾(笠松将)の目的もイマイチ読めない。

 2人の母は嘘を突き通し、いろはの将来を守ることができるのかという大本の見どころに加え、「世間狭すぎるでしょ!」とツッコみたくなるくらい、複雑に絡み合う人間関係がどんな方向性に進んでいくのか。もっと言えば、このドラマに描かれた「生まれてきた環境を子どもは選べない」という普遍的な運命に登場人物たちが、どう抗っていくのか。

『フェイクマミー』の画像

金曜ドラマ『フェイクマミー』

「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」第1回大賞作をドラマ化。正反対の人生を歩んできた2人の女性が、子どもの未来のために“母親のなりすまし”という禁断の契約を結ぶ。

■放送情報
金曜ドラマ『フェイクマミー』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:波瑠、川栄李奈、向井康二(Snow Man)、中村蒼、野呂佳代、池村碧彩、橋本マナミ、中田クルミ、 津田篤宏(ダイアン)、筒井真理子、利重剛、若林時英、宮尾俊太郎、朝井大智、筧美和子、浅川梨奈、笠松将、田中みな実
脚本:園村三
演出:ジョンウンヒ、嶋田広野、宮﨑萌加
主題歌:ちゃんみな「i love you」(NO LABEL MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
プロデュース:韓哲、中西真央、唯野友歩
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/fakemommy_tbs/
公式X(旧Twitter):@fake_mommy_tbs
公式Instagram:fake_mommy_tbs
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