『あんたが』“勝男”竹内涼真ד鮎美”夏帆が急接近? 親世代の苦しみに対する1つの答え

『あんたが』勝男×鮎美が急接近?

 家出中の勝男(竹内涼真)の母親・陽子(池津祥子)と絶賛自分探し中の鮎美(夏帆)が見事リンクした『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)第8話。

 東京の勝男の自宅に押し寄せてきた陽子は、あれこれ息子の身の回りの世話を焼き、ついには「彼女ができたら出ていっちゃる」と言い出す始末。そこで彼女役を引き受けることになった椿(中条あやみ)は、その少し前偶然にも鮎美と行きつけのバーで遭遇していた。

 「鮎美さんは想いが戻ったりしないんですか?」と聞かれて即否定したはいいが、いざその椿が勝男と待ち合わせたり、勝男の自宅から出てきて「料理も美味しかった」とお礼を言っている場を目の当たりにすると、何か胸に引っ掛かりを覚える鮎美。「鮎美に俺の料理食べてもらいたくて料理始めた」と言っていたはずの勝男が、別の女性にも手料理を振る舞っていたのかもしれないという疑惑が頭を過ぎると、素通りはできない。鮎美にとっては「終わったこと」だと片付けていた勝男の灯台下暗しな魅力や可能性、一生懸命変化しようとする彼の健気さや一途さに目を向けてみるきっかけになったようだ。

 そしてその変化は勝男自身だけでなく、勝男の家族にまで波及していく。交際の先には結婚が、そして妊娠出産があるものだと信じて疑わない陽子の発言は悪気なくデリカシーに欠いている。「家事は女性の仕事」だという価値観を椿にも押し付ける様は自分が義母や夫・勝(菅原大吉)から受けて辛かった仕打ちを、知らぬうちに図らずしも次の世代にも継承してしまっている。自身を苦しめる固定観念を強固なものにする側に無自覚に回ってしまっているのが、切なくもある。まるで、同棲していた頃の勝男と鮎美の閉じられた関係性のようでもある。家出をして東京まで出てきたのに、自分の行きたいお店を前にすると外から覗いてみるだけであと一歩が踏み出せない陽子もまた、勝男との同棲解消後の鮎美の姿と重なった。

 「しないんやなくていつの間にかできないになっちょったわ」という陽子の言葉は、誰しもの心にチクリと刺さる痛みを内包する。「王子様にピッタリのお姫様になるために頑張った」が時折「私の人生これでいいん?」という疑問が頭をもたげるとこぼす陽子は、まさに少し前の鮎美そのものだった。それに思い至ったのか「鮎美ちゃんも勝男と別れる時、勇気要ったんやない?」と気遣う陽子は、目の前にいる鮎美の中にも自身と近しい痛みを見たのだろう。そして自分自身も椿や鮎美に対して苦悩を再生産してしまう側に回ってしまったことに気づき、恥じて後悔していた。

 今話、素敵な展開が観られたのは陽子がそのことに自ら気づいただけでなく、椿に旧式の価値観を押し付けようとする母親を止められなかった自分の不甲斐なさに勝男自身が自覚的で、それを陽子に伝えられた点だろう。自分がマザコン寄りかもしれないと前置きした上で「母さんが自分を犠牲にして俺たちのこと育ててくれたんだなぁって思うとなんかね」とこぼした勝男はやっぱり優しい。それを聞いた陽子は「私も勝男に世話を焼きすぎん。勝男も私に困ったらちゃんと言う」と対等な線引きができていた。

 頑固親父の勝にも子育てや家事に積極的に参加できなかった事情があったことが明かされた。その大変さをも「家族に何不自由なく生活させることが俺の責任」だと当たり前に一身に引き受けていた姿を見ると、彼を一方的に咎めることも気が引けてしまう。妻のことを顎で使うのではなく、勝男にご飯のおかわりを頼んだのが精一杯の彼なりの改心の表現で謝罪の意だったのだろう。ぎこちなくてもスマートでなくてもいいから、そうやって思いや考えをぶつけ合って互いの最適解を見つけ擦り合わせる作業をすることこそが、面倒で煩わしくとも“家族になる”ということなのかもしれない。

 さて、渚(サーヤ)からも「1周回ってスタートラインに立った2人」と言われていた勝男と鮎美だが、そろそろ機は熟したのではないだろうか。より自然体でタフになった2人がどんな最適解を見つけていくのか、とっても楽しみだ。

『じゃあ、あんたが作ってみろよ』の画像

火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』

谷口菜津子による同名漫画を原作としたロマンスコメディ。「料理を作る」というきっかけを通じて、“当たり前”と思っていたものを見つめ直していく男女を描く。

■放送情報
火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:夏帆、竹内涼真、中条あやみ、前原瑞樹、サーヤ(ラランド)、楽駆、杏花
原作:谷口菜津子『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(ぶんか社『comicタント』連載)
脚本:安藤奎
演出:伊東祥宏、福田亮介、尾本克宏
プロデューサー:杉田彩佳、丸山いづみ
編成:関川友理
音楽:金子隆博
主題歌:This is LAST「シェイプシフター」(SDR)
制作:TBSスパークル、TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/antaga_tbs/
公式X(旧Twitter):@antaga_tbs
公式 Instagram:antaga_tbs
公式TikTok:@antaga_tbs

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