夏帆は心の迷いを瞳で表現する 『じゃあ、あんたが作ってみろよ』鮎美役で際立つ表現力

火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)で、竹内涼真が演じる勝男が夢中になっている元カノ・鮎美を演じている夏帆の演技が話題だ。夏帆はドラマの中で、いつもぎこちない笑みを浮かべ、目の焦点もどこか定まっていない。
鮎美は、誰かに何かを尋ねるとき、目を大きく見開き、まっすぐに相手を見つめる。黒目がちな瞳は、まるでブラックホールのような闇も秘めており、じっと見つめられると吸い込まれてしまいそうだ。その瞳は、陽気でキラキラとした瞳を持つ勝男とは対照的であり、そのコントラストが、このドラマに独特の魅力を与えている。
鮎美の瞳にふと光が宿るのは、彼氏との時間や、勝男との何気ないやりとり、美容師・渚(サーヤ)との会話の中など、常に「他者」が介在する瞬間だ。つまり、彼女は自分の意志だけでは動けない。だからこそ、勝男のプロポーズを断り、髪をピンクに染めたという行動は、彼女なりの「自分の意志」の表れだったのかもしれない。けれどその後も、鮎美は彼氏のミナト(青木柚)や、渚の言葉に一喜一憂し「私の道は、一体どこにあるのだろう」と迷いを重ねていく。

それにしても夏帆は、心の迷いを瞳の「光」を通じて演じるのが上手い。基本的には虚ろな瞳が、時折ふっと光が灯る瞬間がある。その微細な瞳の変化が、鮎美という不安定な内面を抱える女性を見事に体現していた。本記事では、そんな夏帆の瞳の演技と、心理描写の巧みさに焦点を当てて紹介していく。
本作では、勝男のプロポーズを断った鮎美が「自分は何がしたいのだろう」を模索する姿と、そんな彼女を理解しようと、料理を練習したり、職場の人々と関わりながら少しずつ成長していく勝男の姿が描かれている。

鮎美はいつも、誰かの言葉に対して「そうかな……」と少し力なく笑いながらも、相手を否定せず受け止める。誰かのために尽くすことが、これまでの彼女にとっての生き甲斐だった。けれど、それが本当に自分の幸せなのかは、わからない。だからこそ鮎美は、勝男のもとを離れ、寂しさを埋めてくれるミナトに惹かれるなど、迷走を続けていく。
誰かに心を揺さぶられるとき、鮎美はそっと自分の頭を撫で、恥じらうように目を伏せる。その一連の動きがあまりにも自然で、まるで夏帆自身が、もともと繊細な性質なのではないかと錯覚してしまうほど。ところがYouTubeのTBS公式チャンネル「夏帆×竹内涼真 SPインタビュー!! 別れから始まる 二人の成長&再生ロマンスコメディ! 10月期火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』【TBS】」では、竹内涼真の自然体な言葉に小さく相槌を打ちながらも、自分の考えをしっかりと伝える「芯のある大人の女性」としての夏帆の姿が映し出されていた。
実際の彼女は自立した女性であるにもかかわらず、ドラマの中の鮎美がまるで夏帆そのものに見えてしまうほど、演技が自然で違和感がない。そのギャップに気づいた時、彼女の表現力の凄みに思わず唸った。





















