2025年秋ドラマのトレンドは“弱い”男? 『あんたが』『ちょっとだけエスパー』などから考察

秋クールのテレビドラマは、男性主人公に注目が集まっている作品が多いのだが、どの男も“カッコいいヒーロー”ではなく、弱さや問題を抱えている。
『じゃあ、あんたが作ってみろよ』

その筆頭は、『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系)の海老原勝男(竹内涼真)だろう。
第1話開始時点の勝男は、若いのに亭主関白的な価値観を内面化させたクソ男で、恋人の山岸鮎美(夏帆)が作る筑前煮に対してもバカにした発言をする。その振る舞いが仇となり、鮎美へのプロポーズは断られ、別れたいと言われてしまう。
そんなクソ男の勝男がどう変わっていくかが物語の大きな見どころとなっており、勝男は鮎美の作った筑前煮を自分で作ることに挑戦することで、彼女がいつも作ってくれた料理がいかに手間暇をかけたものだったかを知り、彼女に対して申し訳ないと思う。その後、勝男は料理作りにハマることで男として成長していく。
人がやっていることをバカにして相手を見下すのが勝男の欠点だが、すぐに自分でやってみようと考えるのが彼の良いところ。第6話では、料理の写真を撮ってSNSに挙げる行為をバカにしていたが、すぐに自分でもおこなうようになる。この適応力の高さこそが勝男の一番の魅力だろう。
2017年の#MeToo運動に端を発した世界的なフェミニズム運動の中で、Toxic masculinity (有害な男らしさ)が問題視される機会が増えており、男性の女性差別的な行動を間違った行為として批判することは、常識として定着しつつある。
だからこそ近年は、女性差別的な振る舞いを反省して価値観をアップデートさせた男こそが、カッコいいという逆転現象が起きている。それを物語の中で魅力的に描いたのが、勝男なのだろう。
『小さい頃は、神様がいて』

岡田惠和脚本の『小さい頃は、神様がいて』(フジテレビ系)にも、同じことが言える。本作は、妻のあん(仲間由紀恵)に娘が20歳になったら離婚したいと言われた夫・小倉渉(北村有起哉)が主人公のホームドラマ。
離婚したい理由について妻と話し合う中で渉は、無自覚に無神経な振る舞いをしていたことに気付き、反省していく。だが、反省したからと言って簡単に価値観をアップデートできるわけもなく、何か言う度に妻から苦言を呈される。
令和の価値観に表面上は適応しているように見える渉だが、だからこそ、ふとした瞬間に古い価値観が漏れ出てしまう姿が痛々しい。同じマンションで妻のさとこ(阿川佐和子)と定年生活を送る永島慎一(草刈正雄)が仕事一辺倒で家庭を顧みずにいた会社員時代のことを反省し、罪滅ぼしとして理想の夫として振る舞っているがゆえに、渉のダメさはより際立つ。
ただ、慎一の振る舞いが、妻から必ずしも良く思われているわけではなく、変わることで昔の自分を許されたいという男のズルさも描こうとしているのが、本作の面白さだ。























