『平場の月』初登場5位 「大人のラブストーリー」のマーケットは日本で育つか?

大人のラブストーリーの市場は日本で育つか?

 先週の本コラムで「来場者プレゼントの人気次第では劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の返り咲きもあり得るだろう」と予測した通り、11月第3週の動員ランキングは劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が前週の4位から3ランクアップして再び1位に。週末3日間の動員は21万7000人、興収は3億3700万円。公開9週目にして前週との興収比が155%という異例の数字を叩き出している。公開から59日間の累計動員は572万2300人、累計興収は87億7000万円。これで東宝配給作品が22週連続1位、『週刊少年ジャンプ』発IPのアニメーション作品が18週連続1位。

 新作では最上位となる5位につけたのは、土井裕泰監督、堺雅人&井川遥出演の『平場の月』。オープニング3日間の動員は8万5800人、興収1億2100万円と、東宝の全国公開作品としては少々物足りない出足だが、作品の評判は高く、ここからジワジワと支持が広がっていく気配も。平凡な生活を送ってきた中年の男女のラブストーリーという、近年の日本映画ではあまりないタイプのジャンルだけに、ここで結果を残すことができれば今後の実写日本映画の多様性にも繋がっていくだろう。

 他に今週のトピックといえば、前週の9位から5ランクアップして4位に再上昇した『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の日本を含む全世界の累計興収が、1000億円を突破(1063億円)したと発表があったこと。日本映画が全世界興収で1000億円を超えたのは、これが歴史上初めて。国内興収では先週末までの時点で379億2800万円と、長編映画として前作にあたる『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の歴代1位の記録、407億5000万円を超えられるかどうかギリギリの情勢となっているが、グローバルではいち早く金字塔を打ち立てたことになる。

 折しも、先週末には中国でも『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の劇場公開が始まったばかり。初日だけで1.17億元(約25.5億円)という大ヒットスタートをきっている。もっとも、国会での高市首相の発言を発端とする日中関係の悪化によって、中国では予定されていた日本映画の公開準備がストップしているという報告もあって、それが本当ならば『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の公開はギリギリその前に滑り込んだということになる。2010年代終盤の米中貿易摩擦を発端とするハリウッド映画の輸入制限以降、それが解けた後も中国の観客のハリウッド映画への客足は戻らず、一方で日本映画、特にアニメーション作品への中国の観客のニーズは高まり続けていたが、いずれにせよ外国映画にとって中国は政治に左右される不安定なマーケットであることが今回も明らかになりそうな雲行きだ。

■公開情報
『平場の月』
全国公開中
出演:堺雅人、井川遥、坂元愛登、一色香澄、中村ゆり、でんでん、安藤玉恵、椿鬼奴、栁俊太郎、倉悠貴、吉瀬美智子、宇野祥平、吉岡睦雄、黒田大輔、松岡依都美、前野朋哉、成田凌、塩見三省、大森南朋
原作:朝倉かすみ『平場の月』(光文社文庫)
監督:土井裕泰
脚本:向井康介
主題歌:星野源「いきどまり」(スピードスターレコーズ)
配給:東宝
製作:映画『平場の月』製作委員会
©2025映画「平場の月」製作委員会
公式サイト:https://hirabanotsuki.jp/
公式X(旧Twitter):@hirabanotsuki
公式Instagram:@hirabanotsuki

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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