宇野維正の映画興行分析
「週末はアニメ優勢」「平日は実写優勢」 日本の観客の新しい生活様式?

11月第2週の動員ランキングは、芥見下々による人気コミック『呪術廻戦』のTVアニメ第2期後半及び、来年1月から放送となる第3期1話&2話を上映する『劇場版 呪術廻戦「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回游 先行上映」』が、オープニング3日間で動員41万7700人、興収6億4000万円をあげて初登場1位に。これで東宝配給作品が21週連続で1位、そして『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』に続いて『週刊少年ジャンプ』発IPのアニメーション作品が17週連続で1位となった。今週末公開作品にもそこまで強い作品はないので、いずれの記録もまだまだ更新されていく可能性が高い(来場者プレゼントの人気次第では劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の返り咲きもあり得るだろう)。
一方、公開2週目も順調に推移して2週連続2位の『爆弾』には、その記録を破る可能性があるかもしれない。先週末の週末3日間の成績は動員19万9900人、興収2億9400万円という数字だが、ウィークデイ興行に強く、公開から10日間の累計動員は71万2100人、累計興収は9億9600万円。2週目のウィークデイに入ってからもデイリーでは1位を連続して獲得している。先週末11位、その前週も11位とここにきて2週連続でトップ10圏外になっている『国宝』も相変わらずウィークデイは滅法強く、デイリーではトップ5を連日キープしている。
『爆弾』や『国宝』ほどではないが、公開初週3位、先週末は8位の吉永小百合主演、阪本順治監督の『てっぺんの向こうにあなたがいる』もウィークデイには着実に数字を積み上げていて、以前からその傾向はあったものの、このところ国内の映画興行は「週末はアニメが優勢」「ウィークデイは実写が優勢」という色分けがより一層明確になってきている。それは言うまでもなく、10〜20代の若年層と中年以上の高齢層という観客の中心となる世代の違いをそのまま反映しているわけだが、一部の作品のグローバル展開が絶好調なこともあってメディアで頻繁に取り上げられがちなアニメ作品の隆盛だけでなく、洋画はともかく、日本のメジャー配給作品では実写作品がまだそれなりのシェアとマーケット規模を維持していることはもっと注目されてもいいだろう。
11月11日(火)には『国宝』が興収170億円を突破したことが発表され、実写日本映画歴代興収1位の記録更新までいよいよカウントダウンに入ったわけだが、同作の男女問わず全世代を巻き込んだ歴史的ヒットをどのように繋いでいくかが、今後の日本映画界の大きな課題となる。
■公開情報
『劇場版 呪術廻戦「渋谷事変 特別編集版」×「死滅回游 先行上映」』
全国公開中
キャスト:榎木淳弥、内田雄馬、瀬戸麻沙美、津田健次郎、木村昴、中村悠一、櫻井孝宏、浪川大輔、島﨑信長、諏訪部順一、緒方恵美
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社ジャンプコミックス刊)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
美術監督:東潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介、ACE
音楽:照井順政
音楽プロデューサー:小林健樹
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
製作:東宝、集英社、MAPPA、サムザップ、MBS
配給:東宝
©︎芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
IMAX劇場、MX4D&4DX上映劇場一覧:https://theater.toho.co.jp/toho_theaterlist/shibuyashimetsu.html
『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/





















