朝ドラ『ばけばけ』視聴者も必見! 髙石あかりの“振れ幅”を堪能できる出演作5選

髙石あかりの“振れ幅”を堪能できる出演作5選

『墜落JKと廃人教師』

墜落JKと廃人教師 Lesson2【番組予告】橋本涼×髙石あかり<6月18日スタート>

 『墜落JKと廃人教師』(MBS)で髙石が演じた女子高生の扇言は、好きという気持ちだけでは語れない、少し複雑な心を抱えたキャラクターだ。生徒と教師という関係の中で、相手を思う気持ちと、自分を責めてしまうクセのあいだを行き来しながら、どこか不安定な感情に揺れていく。自己肯定感の低さや、相手に寄りかかってしまうような弱さがふと顔をのぞかせる場面でも、髙石の演技は大げさにならず、あくまで等身大の女の子のまま。視線の揺らぎや短い沈黙の中に、彼女の戸惑いや痛みがそっと滲んでいた。

 『ばけばけ』のトキと比べると、その対比はさらに鮮明だ。トキは困難に直面しながらも、自分の足で立ち続ける芯の強さを持った女性。一方で扇言は、抑えた表情が“強さ”ではなく、“迷い”や“未熟さ”として映る。同じ“静かな演技”でも、役によってこんなにも意味が変わるのかと気づかされる。破滅的に見える関係の中で、なんとか自分を保とうとする少女。その揺れ動く気持ちを、髙石は必要以上にドラマチックにせず、身近な感情として丁寧に汲み取っている。朝ドラで見せる落ち着いた佇まいとはまた違う、年齢ならではの不安定さを抱えた役どころ。そこに自然に寄り添えることも、彼女の強みなのだろう。

『アポロの歌』

【解禁】主演: 佐藤勝利×髙石あかり 原作:手塚治虫 監督:二宮健 / ドラマイズム『アポロの歌』2/18 START

 『アポロの歌』(MBS・TBS系)は、手塚治虫の原作が持つスケールの大きさそのままに、愛と死、そして輪廻転生という普遍的なテーマを描いた作品だ。物語は数万年にも及ぶ時間を行き来し、登場人物も時代も、風景さえもめまぐるしく変わっていく。その中で髙石は、輪廻の中で姿を変えながら主人公と出会う数々の女性像を、ひとりで演じ分けている。

 『アポロの歌』で求められるのは、特定の時代や現実からすっと離れ、抽象的なテーマそのものを“身体で受け止める”ような表現力だ。どの時代に生まれ変わっても変わらない痛み。愛するという行為に宿る、どうしようもない切なさ。そういった概念に近い感情を、観客が触れられる形に落とし込むには、説明しすぎない存在感が必要になる。髙石はその難しさを、力で押し切るのではなく、ふっと余白として残すことで表現している。説明しすぎないからこそ、見る側がその空白に自分の気持ちを重ねられる。

『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』

映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』予告編

 5作目として挙げたいのが、映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』だ。高校新聞部を舞台に、学校の資金消失事件を追う学生たちの奮闘を描いた作品で、青春映画の軽さを持ちながらも“何が正しさなのか”を問う骨太なテーマを備えている。

『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』©︎2024「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」製作委員会

 髙石が演じるのは、新聞部をまとめる部長・かさね。情熱のまま突き進む主人公・トロッ子とは違い、取材のリスクや学校内での立場、仲間の安全など、現実的なバランスを常に考えている存在だ。表向きは冷静で少し厳しく見えるが、部員を守りたい気持ちや、軽はずみな記事で誰かを傷つけたくないという誠実さが、さりげない視線や言葉の端々から滲む。トロッ子と衝突するシーンでは、部長としての責任感と、同世代としての葛藤が入り混じり、髙石の“静かな熱”が物語の緊張を支えていく。主役を引き立てながら、かさねという人物の芯の強さをしっかりと残す演じ方はお見事で、実力はもちろんだが圧倒的なセンスを感じられる。所々で登場する髙石の豊かな表情にも注目してほしい。

 どんな振れ幅にも臆せず身を投じ、役ごとにまったく違う景色を見せてくれる髙石あかり。『ばけばけ』という大きな舞台を経たいま、その表現の器はさらに広がっていくはずだ。次にどんな役に出会い、どんな“変化”を見せてくれるのか。その進化を見届ける楽しみが、またひとつ増えた。

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