朝ドラ『ばけばけ』視聴者も必見! 髙石あかりの“振れ幅”を堪能できる出演作5選

現在放送中のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』で、ヒロインの松野トキを演じている髙石あかり。明治という時代のうねりの中で、外国人の夫とともに日本の文化を伝え続ける女性を、静かな情熱と凛とした佇まいで演じている。約3000人の中から選ばれたその存在感は、時代の空気をまといながらも、どこか現代的な透明感を放っているのが印象的だ。けれど、髙石の魅力はこの“朝ドラのヒロイン”という枠には収まらない。アクション、コメディ、ファンタジーなど、作品ごとにまったく違う表情を見せながら、見る者の想像を軽やかに裏切ってきた。『ばけばけ』で見せている芝居を起点に、ここでは彼女がこれまで歩んできた多彩な役どころをたどり、その振れ幅の大きさを改めて確かめてみたい。
『ベイビーわるきゅーれ』
『ばけばけ』のトキとはまったく違う表情を見せるのが、髙石の代表作でもある2021年公開のシリーズ第1作目『ベイビーわるきゅーれ』で演じたちさとだ。プロの殺し屋という過激な設定ながら、彼女の日常は驚くほど淡々としていて、暴力と生活がどこか同じ地平にあるように描かれている。派手なヒロイズムとは無縁で、むしろちょっと不器用な若者の延長線上にいるようなちさと。その無頓着で飄々とした佇まいの奥に、現代的な虚無感や孤独がふっと顔をのぞかせる。髙石はその“普通さ”と“殺し屋”というギャップを、ごく自然に同居させてみせた。

髙石はこの作品で、アクション映画にありがちな大げさな演出に寄らず、あくまで“日常の延長線上にある暴力”を静かに描き出している。カメラが寄るたび、彼女の表情は淡々としていて、感情の起伏がほとんど読み取れない。けれど、その無表情の裏に、ごくわずかな戸惑いや人間味がふっとにじむ瞬間があり、観客はそこでハッとさせられる。その空虚さの奥には、社会の歪みや若者が抱える息苦しさを映し返すような透明感がある。『ばけばけ』とは演じている役柄は真逆でも、どこかで人としての尊厳を保ち続ける髙石らしさがにじむ部分だ。
『ゴーストキラー』
2025年に公開された『ゴーストキラー』も『ベイビーわるきゅーれ』の流れを汲んだ作品のひとつだ。髙石が演じる主人公・松岡ふみかは、ストレスの多い日々を送る普通の女子大生。そんな彼女の前に突然現れるのが、ふみかにしか見えない“元殺し屋の幽霊”・工藤だ。彼の手を握ると、ふみかの身体に工藤の戦闘能力が乗り移り、二人は奇妙なバディとして、殺し屋組織との戦いに巻き込まれていく。アクション、ファンタジー、ヒューマンドラマが同時進行する、挑戦的な一作となっている。
本作で求められるのは、幽霊という超常の存在と共闘しながら、巨大なファンタジー世界の中で身体を張るアクション主体の演技だ。アクションパートを手がけたのは、『ベイビーわるきゅーれ』でも存在感を発揮した園村健介。作中では、工藤とふみかの能力が瞬時に“入れ替わった”ように見えるスピード感のある演出が印象的で、ふみかが普段の素朴な姿から、突然キレのある戦闘モードへ切り替わる瞬間が何度も描かれている。その切り替えを自然に見せるために、表情の変化や視線の鋭さ、身体の重心の置き方といった、細やかな動きがとても大きな役割を果たしている。もともと“静”の芝居に強い髙石が、本作ではアクションやVFX撮影を通して、表現をより立体的に、そして“動”の方向へ伸ばしていく姿がしっかり刻まれていた。




















