竹野内豊「できることなら“演じたくない”」 現場で初めて抱く感情の大切さや人生観を語る

竹野内豊「できることなら“演じたくない”」

竹野内豊の人生観

——現場のその場の空気を大切にすることで、ハヤトの演技を通じて初めて得られた発見や演技のアプローチはありましたか?

竹野内:ハヤトもそうですし私自身もそうですが、どんなに悩んでも答えが出ないときって、人間誰しもあると思うんです。悩んでも仕方ないことも本当にたくさんあると思うんですが……その悩み続けた先に見えてくる世界ももちろんあります。もしかしたら視点を変えるだけで全然違う世界がそこに存在するかもしれない。しかし今見ている世界だけが全てだと勝手に思い込んでしまい、一人もがいている経験は誰しもが通る道だと思います。ハヤトの心の奥にある心情は、自分も54年間生きてきて幾度となく経験してきたことでもあったので、とても共感できました。そのときは答えが出なくても、意味のないことは一つもなくて、 悩んでいる時間をくぐり抜けた経験があることで、今の自分がある、と10年経ってやっと感じることができました。人生ってその繰り返しなんじゃないのかなと思うんです。

——本作も「老い」をテーマの一つとして描いていると感じます。

竹野内:若いときは何か自分の心の中でつまずくようなことがあって考え込むようなことがあったとしても、なかなかそれを誰かに話すことができませんでした。自分一人で抱え込む時間が多かったですが、年齢を重ねるにつれて自分が考えていることを人に話してみると思いのほか簡単に解決していたり。若い頃はとにかくふさぎ込んでいたような時期もありましたが(苦笑)。そういう自分の変化は感じます。

——ご自身の経験を踏まえて、本作はどんな方に観てほしいと思いますか?

竹野内:この数年、世界でいろいろなことが起こって人生観がガラッと変わったなかで、今回のような企画のオファーを頂いたときにふと興味が湧きました。今までつらい別れの経験があったり、どこか人生の中で悔いを感じている方にもご覧いただけますと幸いです。エリック監督の独特な感性で静かに物語が流れていく作品ですが、希望と再生という普遍的なテーマを映し出してくださっています。、そして何よりもカトリーヌ・ドヌーヴさんがこの日本で撮影を行うという……! 日本のさまざまな景色の中で、名優カトリーヌ・ドヌーヴさんがお芝居する姿を観ていただくだけでも、とても貴重で価値のある映画だと思います。

■公開情報
『SPIRIT WORLD -スピリットワールド-』
全国拡大公開中
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、竹野内豊、堺正章、風吹ジュン、でんでん、鈴木慶一、五島舞耶、吉田晴登、細野晴臣、久保田麻琴、斎藤工
監督:エリック・クー
脚本:エドワード・クー/金沢知樹(脚色及び日本語監修)
制作プロダクション:Wild Orange Artists KNOCKONWOOD Zhao Wei Films m.i. Movies
配給:ライブ・ビューイング・ジャパン 
配給協力:ラビットハウス
2024年/日本・シンガポール・フランス合作/カラー/97分/ビスタサイズ/5.1ch/原題:Spirit World
©L. Champoussin /M.I. Movies / ©「SPIRIT WORLD」製作委員会
公式サイト:https://spiritworld.jp
公式X(旧Twitter):@spiritworld25 
公式Instagram:@spirit_world_movie

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