『じゃあ、あんたが作ってみろよ』勝男と竹内涼真が完全一致? 真に迫る役作りを考察

竹内演じる勝男が筑前煮を作る第1話のシーン。材料を並べて慣れない手つきで包丁を握り、煮込む。観ている間中、笑みが止まらなかった。ファン視点では、自宅でスパイスカレーを作る竹内涼真に脳内変換されていたと思われる。竹内は『マツコの知らない世界』(TBS系)に出演したこともあるカレー好きで“料理男子”として知られる。

近年、結婚に向かない男性の“3C”として「カレーをスパイスから作る男」を挙げることが増えた。こだわりの強さは面倒くささとして敬遠されがちだ。筑前煮を作りはじめると、味にこだわって毎日作ってしまう勝男は、残念さのベクトルが3C男性と重なる。一つのことに夢中になってのめり込むところは、竹内本人に通じる。
せっかちで細かいことによく気づき、シャイで、笑うと目じりが下がって、笑顔に魅了される。それらは、小舅じみた注文をつけ、本心を言い出せず、言葉を発しなくてもわかってくれるはずと甘える勝男の身勝手さと表裏一体だ。面倒見のよさは、他人の生き方に干渉し、押しつけがましい先輩社員として同僚からうざがられる。長所と欠点はコインの両面で、それもたしかに竹内のパーソナリティの一部なのだろう。

『竹内涼真の撮休』(WOWOW)でも竹内はスパイスカレーを作っていた。廣木隆一が監督した第1話で、カレーを作る竹内涼真の存在は現実とフィクションをつなぐ結節点になっていた。『撮休』は竹内が“竹内涼真っぽい竹内涼真”を演じた作品であり、エピソードごとに異なる脚本家の視点を借りながら、外から見た竹内涼真を演出していた。そして当然のことながら、竹内涼真を演じることに関して竹内以上の適任者はいない。
『あんたが』の竹内は限りなく竹内涼真ではあるものの、そこには今作のキャラ設定というレイヤーが重なっており、竹内はそのことを承知の上で勝男を演じている。私たちは、劇中の勝男を架空のキャラクターとして認識しながら、それが竹内本人とシンクロする瞬間を目撃しては、そのあまりの竹内涼真ぶりに悶絶するのだ。今作の“竹内涼真っぽさ”は確信犯である。ややこしいが、それはフィクションの醍醐味でもある。

竹内涼真が勝男を演じることで意味が重なる文脈のマジックは、共演者との間でも生じている。第3話で登場する起業家の柏倉椿を演じるのは中条あやみ。竹内と中条は『君と世界が終わる日に』で主人公とその恋人を演じており、「コミックシーモア」のCMで共演するなど互いをよく知るいわば“盟友”。2人の関係性が役柄に投影されているように見える。第3話で「飲もうぜ」と振られ酒に付き合う様子は、性別を超えた友情そのものだ。
独身男性の自分にとって耳の痛い話が多い『あんたが』は、裏を返せば世界を広げてくれる作品でもある。もし男性の主人公が竹内じゃなかったら、自分ごととして受け止めていただろうか。役柄を超えて親近感を抱かせる竹内だから、失敗し、成長しようとしてもがく勝男を応援する気持ちで観ることができる。その熱量は確実に届いている。
谷口菜津子による同名漫画を原作としたロマンスコメディ。「料理を作る」というきっかけを通じて、“当たり前”と思っていたものを見つめ直していく男女を描く。
■放送情報
火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:夏帆、竹内涼真、中条あやみ、青木柚、前原瑞樹、サーヤ(ラランド)、楽駆、杏花
原作:谷口菜津子『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(ぶんか社『comicタント』連載)
脚本:安藤奎
演出:伊東祥宏、福田亮介、尾本克宏
プロデューサー:杉田彩佳、丸山いづみ
編成:関川友理
音楽:金子隆博
主題歌:This is LAST「シェイプシフター」(SDR)
制作:TBSスパークル、TBS
©TBSスパークル/TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/antaga_tbs/
公式X(旧Twitter):@antaga_tbs
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