『もしがく』“樹里”浜辺美波に変化? より複雑に絡み合っていく登場人物たちの人間関係

『もしがく』“樹里”浜辺美波に変化?

 タロットカードと異質なほどの高揚感によって、前回のラストはやたらと意味深長かつ不穏な空気を伴っていたが、なんとか「久部版『夏の夜の夢』」は公演初日にたどり着くこととなる。10月29日に放送された『もしがく』こと『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系)は第5話。久部(菅田将暉)やWS劇場の人々にとって重要な一夜が描かれる今回までが、このドラマの前半戦、いや“第一幕”というわけだ。

 八分神社から神主の論平(坂東彌十郎)と樹里(浜辺美波)がWS劇場にやってきて、ステージの上でお祓いが行われる。しかしそこでペトラ(アンミカ)だけが名前を呼ばれず、彼女は「呪われるんじゃないか」と不安を抱く。刻一刻と開演時間が迫るなか、モネ(秋元才加)は息子の朝雄(佐藤大空)が学校で使う紅白帽を探しに新宿まで行ってしまうし、ペトラは不安が的中したかのように肉離れを起こしてしまう。なんとか波乱を乗り越えて客入れが始まるものの、今度は行列を見たうる爺(井上順)の様子がおかしくなり……。

 初めからトラブル続きだったことを考えれば、無事に幕が上がり、劇場が人で埋め尽くされた(招待客が大半ではあったようだが)だけでも充分すぎるくらいだ。興味深いのは、肝心の公演の様子がバッサリと削ぎ落とされ、その後の登場人物たちの振る舞いによって舞台が“失敗”に終わったことが表現される点である。わかりやすく肩を落とす久部、特にプラスにもマイナスにもならなかった様子で弁当を食べるリカ(二階堂ふみ)とモネ。もっぱらこのドラマは、登場人物たちが「舞台劇を演じること」ではなく、「舞台劇を演じることで変化していくこと」に重点を置いているのだと示しているのだろう。

 とはいえ劇場から出てきた観客のなかで、樹里だけは一度立ち止まって劇場のネオン看板を見つめる。その挙動は、作品に心を打たれてこの場から立ち去ることを名残惜しんでいるように捉えることができよう。それはすなわち、これまで八分神社で何度か丁々発止のやり取りを交わしていた久部との関係に変化が訪れることを予感させるものであり、また一方で、お祓いの前に樹里を見た蓬莱(神木隆之介)の表情、公演前のアパートの一室で繰り広げられた久部とリカのただならぬ空気感も含め、彼ら4人の物語が動きだす前触れとみることができる。

 いうまでもなく『夏の夜の夢』は4人の男女の恋愛関係――いわゆる四角関係のごちゃごちゃを喜劇へと昇華させた物語である。駆け落ちに始まり、森の妖精たちのちょっとしたいたずらで波乱が起きる。もっとも、このドラマにおいては“駆け落ち”の要素は久部たち4名ではなく、第1話で照明技師と駆け落ちしたいざなぎダンカン(小池栄子)が担っていたので、そっくりそのままなぞることはないだろうが。それでも、ここから登場人物たちの人間関係や思惑のようなものが、より複雑に絡み合っていくことは間違いない。

『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』の画像

もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう

1984年の渋谷を舞台に、脚本家・三谷幸喜の半自伝的要素を含んだ完全オリジナル青春群像劇。「1984年」という時代を、笑いと涙いっぱいに描いていく。

■放送情報
『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』
フジテレビ系にて、毎週水曜22:00~22:54放送
出演:菅田将暉、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波、戸塚純貴、アンミカ、秋元才加、野添義弘、長野里美、富田望生、西村瑞樹(バイきんぐ)、大水洋介(ラバーガール)、小澤雄太、福井夏、ひょうろく、松井慎也、佳久創、佐藤大空、野間口徹、シルビア・グラブ、菊地凛子、小池栄子、市原隼人、井上順、坂東彌十郎、小林薫ほか
脚本:三谷幸喜
主題歌:YOASOBI「劇上」(Echoes / Sony Music Entertainment (Japan) Inc.)
音楽:得田真裕
プロデュース:金城綾香、野田悠介
制作プロデュース:古郡真也
演出:西浦正記
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/moshi_gaku/
公式X(旧Twitter):@moshi_gaku
公式Instagram:@moshi_gaku
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