“巫女役”浜辺美波が重要人物に? 『もしがく』三谷幸喜ワールドを支える俳優陣の妙

『もしがく』三谷ワールドを支える俳優陣の妙

 第一報が出てからというもの、広く話題を呼んでいるドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系/以下、『もしがく』)が早くも放送スタート。菅田将暉が主演を務め、三谷幸喜が脚本を手がけるコメディ作品だ。いったいどのような物語が展開するのかは未知数だが、若手から大ベテランまで、名だたる演技者たちが揃っているのは大きな注目ポイントだろう。ここでは“三谷ワールド”を彩るキャスト陣の並びにフォーカスしてみたい。

 三谷が25年ぶりに民放GP帯で脚本を手がける『もしがく』の舞台は、1984年の渋谷。大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年/NHK総合)が好評だったことも記憶に新しいが、こちらは現代劇である。とはいえ1984年というと約40年も前だから、あの当時を実感をもって振り返ることができる視聴者というのは、それなりにかぎられてくるだろう。いまとは大衆を取り巻く文化や環境がまるで異なる時代。主演の菅田をはじめ、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波たちも体験していない時代だ。

 そんな、遠い昔のことでもないけれど、最近のことでもない1984年の渋谷で、三谷自身の経験に基づいた奇想天外なストーリーが繰り広げられていく。あの蜷川幸雄に憧れ、理想のシェイクスピア劇を作ろうと奮闘する若手演出家・久部三成(菅田将暉)を中心に、WS劇場のダンサーの倖田リカ(二階堂ふみ)、“三谷青年”がモチーフの新人放送作家・蓬莱省吾(神木隆之介)、渋谷にひっそりとたたずむ八分神社の巫女である江頭樹里(浜辺美波)といった者たちの人生が交差していくことになるのだ。コメディタッチの青春群像劇ということらしい。

 物語の中心に立つ4名のキャラクターについてざっくりと記してみたものの、ここから何が生まれるのか、うまく想像できない。さらにここに、久部が訪れるジャズ喫茶のマスター・風呂須太郎(小林薫)や純情派の警官である大瀬六郎(戸塚純貴)、WS劇場の用心棒のトニー安藤(市原隼人)、姉御肌のダンサー・パトラ鈴木(アンミカ)、久部を翻弄する案内所の女性・おばば(菊地凛子)、WS劇場の看板ダンサーのいざなぎダンカン(小池栄子)などなど、多くの個性派キャラクターが絡んでくる。頭に浮かぶのは……なかなかに混沌とした物語だ。

 中心に立つ4人の俳優は年齢からいえば若手だが、すでにいくつもの主演作や代表作を持っている存在である。『鎌倉殿の13人』にも妙演を刻んだ菅田がどのような座長像を立ち上げ、共演経験のある二階堂たちとともにユニークな座組を築き上げていくのか。ここが重要なポイントになってきそうだ。小さな化学反応は、より大きく劇的な瞬間へとつながっていくのだろう。この座組ならば。

 本作のプロデューサーである金城綾香は、浜辺美波が演じる巫女の樹里に注目だとインタビューで語っている(※)。どうやらストーリーが進むにつれて樹里の考え方や姿勢が変化していくようで、この変化こそが物語と密接にリンクしているのだと。いまのところ樹里は巫女であること以外は明かされていないのだが、何か特別な役割を背負っているのは間違いないのだろう。八分神社の神主であり、樹里の父親である江頭論平を演じるのが坂東彌十郎というのも気になる。歌舞伎役者だ。しかも論平の人物紹介欄に“厳格に振る舞うが、実はとある女性ダンサーの追っかけをしている。”と記されている。これも非常に気になる。ここからいくらでも物語を夢想できそうだ。

 もちろん、浜辺が菅田と『アルキメデスの大戦』(2019年)で、神木とは朝ドラ『らんまん』(2023年度前期/NHK総合)と『ゴジラ-1.0』(2023年)で、それぞれに特別な関係を築いた経験があることも注目のポイント。これまで彼女がさまざまな舞台で見せてきた姿が、この『もしがく』という舞台にも見て取れるはず。コメディエンヌとして才能がさらに開花する契機となるかもしれない。

 ちなみに個人的には、長野里美が演じる浅野フレに注目したいところ。WS劇場支配人である浅野大門(野添義弘)の妻だ。長野といえば1980年代の“小劇場ブーム”を牽引した俳優の中心的な存在で、三谷とは同い年でもある。あの当時の空気を肌で知っている人物であり、三谷が本作で目指しているものをもっとも体現できるのは彼女だろう。『もしがく』の脇を固めるベテランの演技者たちの業を堪能できることにもなりそうだ。

参照
https://realsound.jp/movie/2025/09/post-2171806.html

『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』の画像

もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう

1984年の渋谷を舞台に、脚本家・三谷幸喜の半自伝的要素を含んだ完全オリジナル青春群像劇。「1984年」という時代を、笑いと涙いっぱいに描いていく。

■放送情報
『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』
フジテレビ系にて、10月1日(水)スタート 毎週水曜22:00~22:54放送
※初回30分拡大(22:00~23:24放送)
出演:菅田将暉、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波、戸塚純貴、アンミカ、秋元才加、野添義弘、長野里美、富田望生、西村瑞樹(バイきんぐ)、大水洋介(ラバーガール)、小澤雄太、福井夏、ひょうろく、松井慎也、佳久創、佐藤大空、野間口徹、シルビア・グラブ、菊地凛子、小池栄子、市原隼人、井上順、坂東彌十郎、小林薫ほか
脚本:三谷幸喜
主題歌:YOASOBI「劇上」(Echoes / Sony Music Entertainment (Japan) Inc.)
音楽:得田真裕
プロデュース:金城綾香、野田悠介
制作プロデュース:古郡真也
演出:西浦正記
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/moshi_gaku/
公式X(旧Twitter):@moshi_gaku
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