『ばけばけ』芋生悠の語りが怖さを底上げ イセの“呪い”を引き受けたトキの優しさ

『ばけばけ』イセの“呪い”を引き受けたトキ

 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第104話は、トキ(髙石あかり)が興味を示していたイセ(芋生悠)の“呪い”の話が、ついに語られた。

 怪談や言い伝えが大好きなトキにとって、今日は待ちに待った時間だ。けれどヘブンは、面白いだけでは納得しない。「なぜそうなったのか」という理由がなければ、本にはできない。その考え方の違いが場の空気を重くし、結果としてイセの“呪い”の告白を引き出していくことになる。

 ヘブンのもとに集められたのは、トキが連れてきたイセと、丈(杉田雷麟)、正木(日高由起刀)が連れてきた茂吉(緒方晋)だった。2人は言い伝えを語り合うが、日本好きのヘブンはそれらをすでに知っていて、期待外れとばかりに不機嫌になる。イセが話を続けようとしても、ヘブンは「なぜ?」と問いを重ねる。何事にも因果を求める姿勢は、いかにもヘブンらしいし、同時に“語り”を楽しみたいトキとは噛み合わない。

 フミ(池脇千鶴)たちが「もう帰ってもらったほうがいいのでは」とトキに持ちかけるのも無理はない空気だった。場は白け、皆が諦めかける。けれどここで引かないのがトキだ。トキはイセに向かって、「イセが呪われている話をしてほしい」とまっすぐ頼み込む。トキの頼みは、単なる好奇心ということもあるだろうが、イセ本人の言葉を聞きたいというものだった。頑なに語ろうとしないイセだったが、茂吉が「呪われるようになった言い伝えがある」と口を開き、ついに空気が変わる。「これは真の呪いの話だから」と茂吉は部屋を出ていき、イセが1人で語る場が整えられた。

 「わかりました」と言った瞬間のイセの空気が独特だった。感情を強く出すわけではないのに、言葉の置き方ひとつで場の温度を変えてしまう。語られたのは、人形の墓にまつわる話だ。イセは10歳の頃、家族と暮らしていたが、父が病で亡くなり、続けて母も急に亡くなったという。村には「1軒の家で1年のうちに2人死ぬと、3人目が死ぬ」という言い伝えがあり、それ以降の4人目は呪われた一生を過ごしてしまう。その呪いを回避するためには人形の墓を作る必要があったが、イセと兄はそれを迷信だと思い、墓を作らなかった。すると兄も亡くなり、イセは家族を次々に失っていく。孤児になったうえに大病も経験し、村では“呪われた子”として親族からも距離を置かれることになった。

 ここで大事なのは、呪いの真偽ではなく、イセがこの出来事をきっかけに、言い伝えを「ただの迷信」と切り捨てられなくなったことだ。信じることでしか耐えられない痛みが、確かにあったのだと思わせる語りだった。

 その話を聞いたトキが、またトキらしい。トキは、呪われるとわかっていながら、イセが座っていた座布団にわざわざ座り、「信じちょります」と笑い始める。ところが直後、トキは突然息を切らし、頭痛を訴える。それでもトキは倒れる前に、「不幸せが自分にうつったから、これからイセにはいいことがある」とイセに伝える。イセは「ありがとうございます」と頭を下げ、トキはそのまま崩れるように倒れてしまった。ここは呪いのせいというより、興奮と感情の高まりが体に出てしまったようにも見える。怖さに身を預けながら、目の前の相手を救おうとする。その無茶ができてしまうのがトキなのだ。

 そして何より、第104話の怖さを底上げしていたのが芋生悠の語り口だった。淡々としているのに、言葉が耳の奥に残る。間の取り方と視線の落とし方が、朝の時間帯にあるまじき温度を作ってしまう。怪談の内容はもちろんだが、語り手の存在そのものが、怖さを何倍にも増幅していた回だった。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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