失恋はいじめ? 『僕達はまだその星の校則を知らない』が突きつけた恋愛の苦しみと尊さ

『ぼくほし』が突きつけた恋愛の苦しみと尊さ

 「自分で決めてください。何があなたの本当の幸いなのか」

 宮沢賢治『よだかの星』の引用。恋愛には勝者も敗者もいない。自分の間違いに気づいた健治は、つらい思いをしている藤村に救済策を示すのだが、それで問題解決というより、寄り添う人の存在が重要だった。生徒の人格を尊重し、心の叫びに真摯に耳を傾ける、その姿勢が藤村の心を開いた気がする。

 心といえば、藤村が欠席していた授業で、珠々(堀田真由)が取り上げていたのが夏目漱石の『こころ』だった。親友を死なせてしまった「先生」の罪悪感は、やり場のない藤村や堀たちの苦しさと響き合って、人類はずっと同じ感情と向き合ってきたのだと気づかされる。

「あのとき感じた気持ちの全部が汚いものだとは俺は思えない」

 結局のところ、どれだけ自分の恥ずかしい感情と向き合えるかだと思うが、その機会を得た藤村は幸運だったかもしれない。無限の宇宙に目を向ければ、恋をした自分も宇宙の一部でちっぽけで尊いと思えたなら、きっとそれは意味があったのではないだろうか。

 なお、学生時代、初めてできた彼女に振られた筆者が先輩がかけられた言葉は「女なんて星の数ほどいるから」。当時はピンとこなかったが、年齢を重ねると、いろんな意味で恋愛は星のまたたきのようなものだと感じる。

 にぎやかな保健室や天文部の閉ざされたドーム、詩心がつなぐ今作の世界観は、わかってもわからなくても、心地よく疲れた心を包んでくれる。健治から珠々への「月が出ています」も適度に思わせぶりで、寓話と余韻のひとときに早くも魅せられている自分がいる。

『僕達はまだその星の校則を知らない』の画像

僕達はまだその星の校則を知らない

何事にも臆病で不器用な主人公が、共学化で揺れる私立高校にスクールロイヤー(学校弁護士)として派遣されることになり、法律や校則では簡単に解決できない若者たちの青春に、必死に向き合っていく学園ヒューマンドラマ。

■放送情報
『僕達はまだその星の校則を知らない』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:磯村勇斗、堀田真由、平岩紙、市川実和子、日高由起刀、南琴奈、日向亘、中野有紗、月島琉衣、近藤華、越山敬達、菊地姫奈、のせりん、北里琉、栄莉弥、淵上泰史、許豊凡(INI)、坂井真紀、尾美としのり、木野花、光石研、稲垣吾郎
脚本:大森美香
音楽:Benjamin Bedoussac
主題歌:ヨルシカ「修羅」(Polydor Records)
監督:山口健人、高橋名月、稲留武
プロデューサー:岡光寛子(カンテレ)、白石裕菜(ホリプロ)
制作協力:ホリプロ
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/bokuhoshi/
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