『ジョジョ』新作アニメをスタッフ情報から占う 『黄金の風』タッグは『SBR』をどう描く?

『黄金の風』タッグは『SBR』をどう描く?

 荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険 Part7 スティール・ボール・ラン』(集英社)を原作にしたアニメ『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』(以下、スティール・ボール・ラン)を手がけるスタッフの布陣が決定。これまでの『ジョジョ』アニメに携わってきたクリエイターが再結集して得意技をぶつけ、北米大陸を馬に乗って横断する壮絶なレースを描くビッグスケールでスピーディーな物語を作り出す。勢揃いしたスタッフを見れば今度のアニメでも、圧巻の面白さを放ってくれることは確実だ。

『黄金の風』の演出が再び 髙橋秀弥×木村泰大の手腕

『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』 特報映像/"STEEL BALL RUN JoJo’s Bizarre Adventure" Anime Announcement trailer

 19世紀末のアメリカで、史上初の乗馬による北米大陸横断レースが開かれることになった。かつて将来を嘱望されながら半身不随となってしまった元天才騎手のジョニィ・ジョースターは、ジャイロ・ツェペリという名のアウトローと共にレースに挑むが、巨額の賞金がかかったレースの総参加者は3,852人。妨害ありで謀略もめぐらされる中で参加者同士の激しいバトルが繰り広げられるレースで、ジョニィは果たしてゴールにたどり着けるのか?

 以上が『スティール・ボール・ラン』のざっとしたストーリー。そのアニメ化にあたって監督に起用されたのが、イタリアを舞台にスリリングなスタンド戦を描いたParte5『黄金の風』で監督を務めた木村泰大と髙橋秀弥だ。その時はどちらも『ジョジョ』アニメに初参加だったが、アニメーター出身の木村と演出経験を積み重ねてきた髙橋の持ち味が合わさって、すべてが見せ場のようなドキドキ感に溢れたジョジョを見せてくれた。

TVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』ティザーPV

 一例が、第28話「今にも落ちて来そうな空の下で」での胸の奥からせり上がってくるような感動を誘う髙橋の絵コンテと演出だ。元警官でブチャラティの部下になっていたアバッキオが不意打ちによって命を奪われるエピソードを、アニメでは荘厳な音楽が流れ続ける中でじっくりと描いて、アバッキオが人生の最後に成し遂げたことを讃え、仲間たちの深い悲しみも感じさせた。

 ジョルノとブチャラティ、ミスタ、ナランチャが並んで歩き去っていくシーンも、アバッキオの遺体が横たわる海岸に花が咲き乱れているシーンも原作にはないアニメオリジナル。これによってアバッキオに対するブチャラティたちの追悼の念と、ボスのディアボロとの戦いに向かう決意が浮かび上がった。シーザー・ツェペリや花京院典明といった、途中で退場していく者たちの別れが『ジョジョ』のシリーズでは見せ場になっている。アバッキオとの離別もそのひとつだが、アニメは演出によって感動が増幅されて屈指の名シーンとなった。

TVアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」第2弾ダイジェストPV

 木村も、担当回となった第37話「王の中の王(キング・オブ・キングス)」でディアボロとの最後の戦いを、緊張感あふれる展開のなかに描き出して視聴者の目を釘付けにした。両監督とも原作の本筋を損なうことなく、付け加えたり順番を入れ替えたりして盛り上がりを作っていった。こうしたスタンスが『スティール・ボール・ラン』に引き継がれた場合、毎週が演出的にもアクション的にも見どころにあふれ、そして全話を通してしっかりとしたメッセージが浮かび上がってくる作品になることだろう。

 気になるところがあるとしたら、『スティール・ボール・ラン』は、大量の馬が広大な北米大陸を疾走するなかでレースの参加者たちがバトルするという、かつてないスケールと展開を持った作品だということだ。漫画なら止まった絵で描けても、アニメは映像として馬を走らせ人も戦わせといった作業が必要となる。大勢いるキャラたちの出し入れも大変そう。『黄金の風』でグループ戦を描いた経験を活かしつつ、新たな挑戦を見せてくれると信じたい。

“ジョジョらしさ”を支える加藤敏幸、小林靖子、津曲大介

 各話の演出なり絵コンテで関わってくるメンバーも大勢いそうだが、そこは1stシーズン『ァントムブラッド』の演出面で中心的な役割を果たし、第3部の『スターダストクルセイダース』でチーフ演出を務めた後、第6部『ストーンオーシャン』とスピンオフ作品『岸辺露伴は動かない』で監督を務めた加藤敏幸がシリーズディレクターとして役割を果たす。これまでの経験を発揮してまとめ上げて、これぞ『ジョジョ』アニメだといった雰囲気を出してくれるだろう。

 そこでは、シリーズ構成を担当する小林靖子の経験も大きな役割を発揮してくる。何しろ2012年の1stシーズンから13年間ずっとシリーズに携わってきたメインクリエイターだ。原作の荒木が見せようとしているキャラたちの熱さであり、独特の言い回しであり、様式美に溢れた展開でありといった“お約束”も知り尽くしていて、アニメ化にあたってしっかりと入れ込んでくれるはずだ。

 ジョジョらしさを構成する上で欠かせない絵柄については、『黄金の風』や『ストーンオーシャン』で作画監督を務めた津曲大介がキャラクターデザインと総作画監督を担当する。時代によって変化している荒木の絵柄の中でも、『Part7 スティール・ボール・ラン』は『Parte5 黄金の風』と『Part6 ストーンオーシャン』に近い。これらのアニメ化に携わっていた津曲なら、原作を踏襲した絵やキャラのデザインを描けるといった判断があったのかもしれない。

 スタッフ情報の発表にあわせて公開された津曲によるジョニィとジャイロの絵は、顔立ちもポージングもまさしくジョジョといったものだった。『スティール・ボール・ラン』に登場する、過去の『ジョジョ』の登場人物を思わせながらその時代の絵柄にリファインされたキャラたちが、津曲の描写力でどのように表現されるかが楽しみだ。スピード感に溢れた展開も、大量のキャラたちによるくんずほぐれつのバトルも、隅々にまで目を行き届かせて圧巻の表現を見せてくれることだろう。

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