中村アンと小澤征悦の掛け合いがとにかく面白い 『こんばんは、朝山家です。』は名作の予感

夏ドラマのラインナップが出揃う前だというのに、心がざわつく名作が早くも現れた。7月6日より放送がスタートした『こんばんは、朝山家です。』(ABCテレビ・テレビ朝日系)は、まさに今期ナンバーワンの面白さを狙いにきている作品だ。
本作は、国民的ドラマ“国ドラ”を手掛ける脚本家の夫・賢太(小澤征悦)と、彼を売れないころから支えてきたスーパーウルトラな妻・朝子(中村アン)、そして2人の子どもたちが織りなす一家奮闘ホームドラマ。朝子は、“残念な夫”である賢太にイライラが止まらず、いつの間にか“キレる妻”に。しかし、賢太は朝子がキレていても気にしないどころか、飄々としているのがじわじわくる。そんな態度が、余計に朝子の怒りを助長させるのだろう。
こういったホームドラマの場合、“恐妻”と“尻に敷かれている夫”にスポットが当たることが多いが、『こんばんは、朝山家です。』は、社会問題にも目を向けているのがいい。たとえば、小学6年生の長男・晴太(嶋田鉄太)は、発達障がいのひとつである自閉症スペクトラム症であるため、朝が弱く、学校に行っても突然逃げ出してしまったりする。また、圧をかけるような言い方をされることに対して極度なストレスを感じてしまう。
そんな弟のことを、「怠け者」「ダメ人間」だと罵るのが、高校1年生の長女・蝶子(渡邉心結)。この言葉だけ聞いたら、“酷い姉”と感じる人が多いかもしれないが、蝶子は「パパとママは、晴太を特別扱いしてる」という葛藤を抱えている。「わたしだって、学校に行きたくて行ってるわけじゃない」「本当は学校が終わったら晴太みたいに家で漫画を読んだりYouTubeを見たりしていたい」「なぜ晴太は学校をサボっても怒られないの?」「気圧のせいでしんどいとか、誰だってある」「圧をかけるような言い方なんて誰だって苦手だ」など、発達障がい児のきょうだいが感じていることを、ここまで深掘りする作品もめずらしい。
発達障がいという言葉が浸透してから、それに対応する環境が出来上がりつつある。たとえば、晴太の担任・木本先生(影山優佳)は、晴太が大きい音が苦手なことを理解し、「イヤマフしていいよ」と声をかけたり、「縦笛ができなかったらフリでもいいからね」とアドバイスをしてあげたりする。生徒一人ひとりに合わせた対応ができるようになったのは、すごくいい変化だと思う。ただ、その一方で蝶子のように「わたしだってしんどい」という思いを抱えている子がいるのも事実だ。できるのにやらないのと、本当にできないのは違う。でも、なかなかそれを理解するのは難しい。そのあたりも、『こんばんは、朝山家です。』を通して描かれていくのだろうか。

























