津田健次郎だけじゃない 松山ケンイチ、草彅剛ら「朝ドラ」の歴代“クセつよ上司”を振り返る

バディ的な師弟関係をビビッドに描いていたのは、『ブギウギ』(2023年度後期)ではないだろうか。福来スズ子(趣里)の物語は、作曲家・羽鳥善一(草彅剛)の物語でもあった。二人のキャラのモデルとなったのは、それぞれ、笠置シズ子と服部良一である。
スズ子は、関西から東京の劇団に移ったところで羽鳥と出会う。すでに歌手としてそれなりに人気のあったスズ子に、羽鳥は「ワクワクしないんだよなぁ」「バドジズしてないよね」とダメ出し。ジャスをやりたい、と考えている羽鳥は、「ラッパと娘」を特訓する。スズ子は何を言われているのかわからなくなるのだが、「僕は福来くんが最高に楽しく歌ってくれたらそれで良いんだけどね」と言われ、自分の感情を爆発させて怒ったように歌う。すると、「ジャズっぽくなった」と羽鳥が認め、それからは最強のコンビに。旗揚げ公演での激しい踊りと力強い歌唱が評判となり、スズ子は「スウィングの女王」と呼ばれ、時代の寵児となっていく。
朝ドラ『ブギウギ』趣里の笑い顔には“バドジズデジドダ”の真髄が詰まっている
“バドジズデジドダ”の響きは魔法の呪文のように、聞く者をワクワクさせる。朝ドラことNHK連続テレビ小説『ブギウギ』第6週「バドジ…スズ子が自分に限界を感じ、歌手を引退するという時には、羽鳥は、まるで自分の一部をもぎ取られるように感じたのかもしれない。怒りを露わに抵抗して、絶縁宣言してしまう。妻の助言があって、なんとか話し合うことになった時、羽鳥はスズ子にようやく自分の思いを率直に語る。「一番耐えられなかったのはブギイコール福来スズ子になってしまったことなんだ。僕はいつしか君に嫉妬していたんです」と。そして、「羽鳥善一という作曲家を作ってくれたのは、紛れもなく君です。深く感謝します」と頭を下げた。最初は師弟関係だったものが、いつしか逆転し、嫉妬したり、依存したりすることがあるのかもしれない。それほどまでに同志になるということがある。仕事を通して作られる強い絆が羨ましくもあった。
『ブギウギ』趣里×草彅剛が築き上げた深い絆 最終週で明かされたタイトルバックの真意
『ブギウギ』(NHK総合)第125話は、羽鳥(草彅剛)のシーンで始まった。ピアノの前でため息をつく羽鳥。いつもの陽気な調子は影を…そのほかにも、『おかえりモネ』(2021年度前期)の朝岡覚(西島秀俊)や『半分、青い。』(2018年度前期)の秋風羽織(豊川悦司)、『とと姉ちゃん』(2016年度前期)の花山伊佐次(唐沢寿明)など、印象深い上司キャラは枚挙にいとまがない。
こうした上司の存在は、視聴者にも共感を得られやすいのではないだろうか。一般企業でも、若い時に出会った上司の存在は特に大きい。認めてもらって嬉しかったことや、上司の何気ない一言が一生を決めたり、尊敬もあれば憎らしい気持ちもあったり、立場が変わることで関係が変化することもある。人間関係としては、人生の中で小さくはない存在であろう。

『あんぱん』の東海林は、今後、のぶとどんな関係を紡いでいくのだろうか。新聞社の中でも、実力は認められているようだが、メインストリームではなさそうだ。鷹揚なタイプのようであって繊細そうでもあり、頼りになりそうで、ちょっと心配な感じもある。のぶの元気とやる気、明るさに、彼自身が救われていく場面も多そうだ。
ところで、松山ケンイチといい、草彅剛といい、上司役というのはいつもなんだかクセがある。津田健次郎がどんなクセを見せてくれるのか、その演技にも注目したい。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK
























