綾野剛、またもキャリアを更新 三池崇史監督との再タッグ作『でっちあげ』は真の勝負作に

綾野剛、『でっちあげ』でキャリアを更新

 さて、ここまで一度もその名を出さずにきたが、本作は三池崇史監督の最新作でもある。三池監督といえば、世界中にコアなファンを持つバイオレンス映画の巨匠であり、多種多様なジャンル映画を手がけてきた職人監督でもある。そんな三池監督と綾野がタッグを組むのは、『クローズZERO II』(2009年)から16年ぶりにして2度目のことだ。同作で綾野が演じていたのは非常に個性の強い猟奇的なキャラクターで、ここで彼の存在を認知した方が多いのではないだろうか。学校の授業を抜け出して映画館で観た私がまさにそうだ。鮮烈だった。

 マンガを原作とした『クローズZERO II』は不良たちが激しいアクションを繰り広げるジャンル映画だから、出演する俳優たちには特異な個性/ビジュアルが求められていた。そこに参戦したのが、まだ20代の頃の綾野である。けれどもあれから16年が経った。『でっちあげ』で求められるのは、個性/ビジュアルではなく、演技者として闘うための瞬発力と持久力だ。今作もジャンル映画に分類できるものではあるが、綾野が薮下誠一というキャラクターをリアルな人物として掘り下げたことによって、私たちの胸を震わせるヒューマンドラマとしても成立している。主演が違えば感触の異なる作品になっていたことだろう。

 綾野は参加する作品ごとに私たちに勝負を仕掛けてきたが、自身のキャリアの転機ともなった『クローズZERO II』の三池監督との再タッグ作は、ほかとはまったく異なる“勝負作”になったのではないだろうか。これだから、俳優を追いかけるのはやめられない。『でっちあげ』という作品を前に心拍数を上げながら、そんなことを思うのである。

■公開情報
『でっちあげ 〜殺人教師と呼ばれた男』
全国公開中
出演:綾野剛、柴咲コウ、亀梨和也、大倉孝二、小澤征悦、髙嶋政宏、迫田孝也、安藤玉恵、 美村里江、峯村リエ、東野絢香、飯田基祐、三浦綺羅、木村文乃、光石研、北村一輝、
小林薫
監督:三池崇史
原作:福田ますみ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫刊)
脚本:森ハヤシ
音楽:遠藤浩二
主題歌:キタニタツヤ「なくしもの」(Sony Music Labels Inc.)
制作プロダクション:東映東京撮影所、OLM
制作協力:楽映舎
配給:東映
©2025「でっちあげ」製作委員会
公式サイト:detchiagemovie.jp
公式X(旧Twitter):@detchiagemovie

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