アニメ『光が死んだ夏』の肝は“音”の演出 小林千晃×梅田修一朗が紡ぐブロマンスに期待

音響演出にも、細やかなこだわりが光る。原作でも象徴的だった冒頭のクマゼミの「シャワシャワ」という鳴き声は、描き文字ではなく活字で印字。視覚的にも音を印象づける演出がなされていたが、アニメではそれが実際の音としてどう変換されるのか。その答えを体感できるのも映像化の醍醐味だろう。
竹下良平監督は、第1話の音響づくりにおいての注目ポイントに、「ドロドロにつけている音」を挙げている。何層にも重ねられた音のなかには、なんと人間の声も紛れ込んでいるという。(※2)「ぜひイヤホンで聴いてほしい」と語るその意図は、音の密度によって観る者の感覚をじわじわと侵食していく、この作品ならではの不穏さの設計に深く結びついているのだろう。
本作に登場する怪異もまた、安易に解釈や整理ができない存在として登場する。作者自身が『ほんとにあった怖い話』や『怪談新耳袋』といった実録ホラーに親しんでいることもあり、作中に登場する出来事の多くは、明確な答えを与えずにじっとこちらを見つめてくる。
近年、怪異をバトルで駆逐していく作品が多いなかで、『光が死んだ夏』はまったく異なるアプローチを取っていると言っても過言ではない。言葉にできない気配や、理屈では処理しきれない違和感。それらが日常のなかに静かに忍び込み、観る者の心にじわじわと染み込んでいく手触りはまさに、ジャパニーズホラー特有の“恐怖”そのものだ。
一方で、光とよしきの関係には、静かなブロマンスの気配も漂う。得体の知れないものを前にしながら、それでもそばにいたいと願う感情。親友を失った喪失感と、目の前にいる“ヒカル”への愛着。恐怖と安らぎが同時に存在するような、複雑な心の機微が描かれる深い感情の層を、アニメーションでどこまで昇華できるのかも見どころの一つだ。
音、声、空気、違和感。すべてが静かに積み重なり、観る者の背後にそっと忍び寄る『光が死んだ夏』。この夏、夜の深い時間に、ぜひ画面をのぞいてみてほしい。目の前でよしきの名前を呼ぶその存在が、本当にヒカルなのかどうか。それを確かめるには、自分の耳と目で向き合うしかないのだから。
参照
※1. https://promo.kadokawa.co.jp/hikarugashinda/special/
※2. https://animeanime.jp/article/2025/03/21/89951.html
■放送・配信情報
『光が死んだ夏』
日本テレビ系にて、7月5日(土)スタート 毎週土曜24:55〜放送
Netflixほかにて、毎週土曜25:55〜配信
Netflix世界独占配信、ABEMAにて見放題最速配信・無料独占配信
キャスト:小林千晃(辻中佳紀役)、梅田修一朗(ヒカル役)、小林親弘(田中役)、小若和郁那(暮林理恵役)、花守ゆみり(山岸朝子役)、中島ヨシキ(巻ゆうた役)、若山詩音(田所結希役)
原作:モクモクれん(KADOKAWA『ヤングエースUP』連載)
監督・シリーズ構成:竹下良平
キャラクターデザイン・総作画監督:高橋裕一
ドロドロアニメーター:平岡政展
音楽:梅林太郎
オープニング主題歌:Vaundy「再会」
エンディング主題歌:TOOBOE「あなたはかいぶつ」
アニメーション制作:CygamesPictures
©モクモクれん/KADOKAWA・『光が死んだ夏』製作委員会
公式サイト:https://hikanatsu-anime.com/
公式X(旧Twitter):@hikanatsu_anime
公式TikTok:@hikanatsu_anime






















