千葉翔也×鬼頭明里×小林千晃が語る『アオのハコ』の役作り “一歩踏み出した”過去の経験も

千葉翔也×鬼頭明里×小林千晃

 高鳴る鼓動に秘かな片想い。近づきそうで縮まらない2人の微妙な距離――。SNSで「胸キュンが止まらない」「これぞ青春」との声が相次いでいるのが、純粋でまっすぐな青春模様を描くアニメ『アオのハコ』だ。

「俺には、毎朝一番に会いたい人がいる」。中高一貫のスポーツ強豪校でバドミントン部に所属する猪股大喜は、毎日早朝から自主練に励んでいた。しかし、その理由はバドミントンの上達のためだけではない。女子バスケ部の先輩・鹿野千夏への心に秘めた憧れが、大喜の日々を動かしていた。

 等身大の高校生たちの心の動きを丁寧に描写した本作は、アフレコ現場も熱に溢れていた。不器用でひたすらまっすぐな大喜を演じる千葉翔也は、千夏との掛け合いについて上田麗奈と何度も話し合いを重ねたという。大喜の幼なじみ・蝶野雛役の鬼頭明里、親友・笠原匡役の小林千晃とともに、青春の煌めきを閉じ込めた本作を支える3人の声優の演技に迫る。

“表情がコロコロ変わる”キャラクターたちとの向き合い方

――千葉さんは、少しでもリアルに大喜のことを知るために、オーディション前から腹筋ローラーをして臨んだとか。

千葉翔也(以下、千葉):そうなんです(笑)。大喜って、腹筋が割れているんですよ。やってみて思ったのは、尋常じゃない運動量だなってことですね。めちゃくちゃ筋肉痛になりました。なのに、彼は涼しい顔して目標のためにこれをやってるわけじゃないですか。体力も精神力もすごいですよね。

千葉翔也

――そんな大喜を演じる上で、何を大切にされていましたか?

千葉:男子ならではの葛藤や悩みに共感できる部分がありつつ、彼の明るさや根の強さって、誰が見ても好きになってしまうような部分なんですよね。そんな大喜像をしっかり考えつつも、意図的な演技をしすぎるとあざとくなってしまうので、自分が大喜のここが好きだなって思う部分を大事にして。見つけるたびに、二重丸をつけていました。

――小林さん、鬼頭さんはいかがでしょうか?

小林千晃(以下、小林):僕の演じる匡は、そんな大喜をサポートする立場かなって思いながら演じています。大喜が悩んでることにそっと言葉をかけるんですけど、あくまで押し付けない。ちばしょーが良い意味であまり深く考えずに自然に演じてるので、僕もそこに乗っかれるように。「これは俺の意見なんだけど」って感じの雰囲気で、でも腐れ縁の友達らしい雑な感じも出す。そのバランスは意識して、なるべくフラットな気持ちで演じてます。

――「自分が演じるなら匡かなと思ってた」とキャストコメントでおっしゃっていましたね。

小林:実は、匡以外にも大喜役でオーディション受けさせてもらったんですけど、全然手応えが違って。やっぱり改めて自分は匡が合うなって思っていた中で、ちばしょーが大喜役になって、これは支えがいがあるというか(笑)。僕ら同士も普段からいろいろ言い合える仲なので、すごくありがたいキャスティングでした。第1話のキャスト表を見たときに、本当にベストなペアだなって。

鬼頭明里(以下、鬼頭):雛は大喜とは腐れ縁なので、おちょくったりいじったりするんですけど(笑)。それが嫌な子に見えないように、かわいらしく見えるよう気をつけています。普段はちょっとおちゃらけてるけど、新体操とか自分のやりたいことに関しては本当にストイックで、すごく真面目な子なんです。そのギャップも大切にしてますね。

鬼頭明里

――ヒロインが2人のラブコメ作品だと、片方が意地悪なキャラクターに見えることもありますが、雛はまた全然違った愛くるしいキャラクターだと思いました。

鬼頭:そうですね。「自分が好きな人と結ばれたい」という気持ちもあると思うけど、それよりも大喜の幸せを応援してて。その気持ちは、観ている方にも雛の魅力として響くんじゃないかなと思います。

――上田さん演じる千夏と大喜の掛け合いが中心となりますが、鬼頭さんと小林さんから見たお2人の作り出す空気感はいかがでしたか?

小林:アフレコの後、すごい話し合ってたよね?

千葉:確かに。終わってから30分くらい話していることもあったかも。

小林:お互いの芝居に役者同士が言及することって、声優業界ではほぼないと言っても過言じゃないんです。掛け合いの中で生まれるものに合わせていくというか。相手の反応を見ながらその場で作り上げていくことが多いんですけど、2人はすごく話し合いをしてる印象があって。でも、話してる内容を僕らは全然知らないんです。

――千葉さんと上田さんは何をお話しされていたんでしょうか?

千葉:千夏と大喜って2人ともその場の感情を大事にするキャラクターなので、多分「噛み合わない」のが正解なんですよね。でも、僕ら自身は、その噛み合わないことに慣れてないというか。極端に言えば、“噛み合わせられちゃう”んですよね。

小林:なるほどね。

千葉:だから、手応えを感じたときに、お互いに「今めちゃくちゃ良かったけど、何が良かったんでしょうね」って。「上田さんのセリフのここが俺は嬉しくてこうなりました」とか、上田さんは「大喜のここが刺さったからこうなりました」みたいな。序盤からそういう話の積み上げをしていくと、全然自分の予想外のところが相手に刺さってたりするんですよ。

――予想外というのは?

千葉:例えば大喜が千夏を励ますシーンとかって、かなりわかりやすく描かれていたりする。でもそこじゃなくて、日常の中で明るく(千夏の言葉に)返している大喜が良かったとか。上田さんとちゃんと共演したのは初めてなのですが、本当に楽しかったです。

鬼頭:麗奈は「今のセリフどう聞こえた?」とか、千葉くんに一番聞いてると思うんですけど、他のみんなにも意見を求めてて。そのままでも全然すごいのに、それでもまだ突き詰めようとしてるところに、麗奈の真面目さを感じました。しかも本当に些細なことでも、言ってみると「ああっ!」って受け止めてくれたりする。すごくストイックなんです。

――鬼頭さんも同じように感じることもあるのでしょうか?

鬼頭:「どう聞こえたんだろう?」って、たまに私も気になったりはします。でもなかなか周りの人に聞けないので。そうやって現場で周りに率直に意見を求めることができるのは、強いなって思いますね。

千葉:でも、今回の現場で千晃と鬼頭さんの2人から刺激を受けたこともあって。この作品って、写実的なシーンから急にトーンが変わってギャグになる、その切り替えが割とはっきりしているじゃないですか。そのコミカルなシーンの料理の仕方が独特だなと。引き出しがいっぱいあって、思いつきもしなかったような表現もあるので。

小林:え〜嬉しい。

千葉:自然な流れでギャグだってわかってほしいけど、やりすぎるとあざとくなる。その塩梅が2人の中で洗練されているなと感じました。

――その塩梅は、やはり役者の方によっても大きく変わるものなのでしょうか?

小林:そうですね。普段すごく声が低くて、カッコいい大人なキャラをやってる方が、ちょっとポロっと面白いシーンをやるだけで成立する。コミカルな演技には、そういう面白さもあったりします。

千葉:基本は普段守っている(声の)ラインからどうズラすかなんですよね。2人はそれが上手いんだと思う。

小林:大喜はセリフ量がとにかく膨大だし、表情もコロコロ変わるから。その辺は特に難しいんじゃない?

千葉:そうそう。だから、もっとボケられるところでも「この言い方はただの俺だな」って思ってやめたりもした(笑)。大喜って、本当に素直な子だから。構えて正解のトーンでツッコんだりボケるんじゃなくて、ただただ素直に(面白いことを)言っているのがいいんですよね。

小林:確かに。観てる方がちょっとにんまりする程度の……声を出さないぐらいでクスッと笑える表現がちょうどいい気がする。

鬼頭:逆に、私が大喜を見てて思ったのは、「モノローグってこんな声出していいんだ」って。私の場合、モノローグって心の声だから、ボソボソ喋ったりとか、セリフとの差をつけなきゃって思ってやっちゃうんですけど……。こんなに出して、でもそれもまた大喜らしさなんだなって思わせられるような。

千葉:僕もモノローグは「響きとか変えて、心情だと分かりやすくやろう」と強めに意識としてあったんですけど、この作品はあんまり“モノローグ=心情”だから対象がいないっていう感じでもなくて。たまたま口から出た心の声が、相手に伝わっているかどうかの違いかなと思っていて。逆に鬼頭さんがモノローグでちゃんと(声のトーンを)落としていることを、これまで共演が多い中で、この作品で初めて気がつきました。

鬼頭:そうそう、私は意識して切り替えてる! 聞いてる方が「セリフ? モノローグ?」ってならないように。

小林:親切心すごっ……!

千葉:鬼頭さんのモノローグは小声でも持っている響きがすごいよね。しかもオンエアで、映像でもちゃんとそこの音がのっていて、感激しました。

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