『グレンラガン』カミナから『鬼滅の刃』宇髄天元へ 小西克幸演じる“兄貴キャラ”の魅力

小西克幸演じる“兄貴キャラ”の魅力

 このように小西が演じてきたキャラクターは、渋くて男らしい声を思い浮かべる人も多いかもしれないが、実は彼の本領はコメディにこそある。『べるぜバブ』の男鹿辰巳のような不良キャラでも、ちょっとしたセリフににじむお茶目さで憎めない存在に変えてしまうし、『ディーふらぐ!』の風間堅次ではテンポの良いツッコミで作品の空気を回している。『しろくまカフェ』の常勤パンダさんのような、のほほんとしたキャラクターにさえどこか温かさがあり、くすっと笑わせる余白がある。さらに『世界一初恋』の高野政宗では、不器用で真面目な大人の色気を低音で丁寧に響かせ、多くの人を虜にした。

 だが、この役は彼の声の万華鏡のごく一部にすぎない。兄貴、冷徹なボス、陽気なツッコミ役、恋に不器用な大人……どの役でも、そこにあるのは「キャラクターの声でありながら、小西克幸の声」であることだ。声優という仕事は、一度イメージがつくと同じ役柄が集まってくることも多い。しかし小西は、与えられた役をきっちり演じきりながらも、必ず新しい声を更新してきた。その積み重ねが今の幅の広さを生んでいるのだろう。

 宇髄の「派手さ」が私たちを魅了する一方で、小西の次の役はどんな声で驚かせてくれるのか。豪快に笑う兄貴かもしれないし、息を潜めた冷徹な支配者かもしれない。あるいは、肩の力が抜けたコメディの相棒かもしれない。ひとつ確かなのは、どんな役を与えられても、その声にだけはいつも人間味があることだ。総集編の放送で宇髄天元の「今」をもう一度味わいながら、その先に待つ“まだ聴いたことのない小西克幸”に思いを馳せたい。

■放送情報
『特別編集版「鬼滅の刃」遊郭決戦編』
フジテレビ系にて、7月3日(木)19:00~21:48放送
キャスト:花江夏樹(竈門炭治郎役)、鬼頭明里(竈門禰󠄀󠄀豆子役)、下野紘(我妻善逸役)、松岡禎丞(嘴平伊之助役)、小西克幸(宇髄天元役)、石上静香(まきを役)、東山奈央(須磨役)、種﨑敦美(雛鶴役)、沢城みゆき(堕姫役)
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
美術監督:衛藤功二
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
アニメーション制作:ufotable
主題歌:Aimer「残響散歌」「朝が来る」
©︎吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

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