『WIND BREAKER』実写化における“3つのポイント” 水上恒司に“桜遥”の立体化が託される

にいさとるによる漫画『WIND BREAKER』が、12月に実写映画として全国公開される。特報映像の解禁とあわせてメインキャストも明らかになり、SNSを中心に早くも大きな話題を呼んでいる。
原作漫画は2021年より『マガジンポケット』(講談社)にて連載を開始。2022年には「全国書店員が選んだおすすめコミック」に選出され、2024年にはTVアニメ化。2025年にはTVアニメ第2期の放送に加え、舞台化やゲーム化も進行中と、多角的なメディア展開が加速している。
人気作品ゆえに、メディアミックスも広がりを見せている本作だが、原作やTVアニメを追いかけてきたファンのなかには、今回の“実写化”のニュースに戸惑いを覚えた人も少なくないだろう。作品に対する深い愛情の裏返しで、実写化と聞くと身構えてしまう読者や視聴者の気持ちもよくわかる。原作・アニメと追ってきた筆者自身、次はアニメ第3期の発表かと思っていたタイミングだっただけに、驚きを隠せなかった。
一方で、実写版『WIND BREAKER』には、「もしかすると」と期待したくなる要素もある。本稿では、『WIND BREAKER』の実写化がどう仕上がるかを考えるうえで、特に気になる3つのポイントを挙げてみた。
バトルの裏にある“複雑な人間ドラマ”をどう描く?
1つ目は、バトルの裏にある“関係”をどう描くかだ。まず、本作が「実写向きの原作」であることは間違いない。現代日本を舞台に、ファンタジー要素を含まない“ヤンキーもの”というジャンルは、これまでも数多く映像化され、ヒット作を生み出してきた実績があるからだ。
しかし『WIND BREAKER』が同ジャンルの他作品と一線を画すのは、アクションや勝敗の勝ち負け以上に、登場人物の内面や関係性に深く踏み込んでいる点にある。ボウフウリンという“居場所”のなかで育まれる友情や信念。それは時に、対抗する勢力の中に垣間見えることもある。その繊細なドラマをどれだけ丁寧に描けるかが、映画としての完成度を左右するはずだ。
すでに公開されたファーストルックでは、東風商店街に獅子頭連が押し寄せる場面が映し出されていた。ネタバレを避けるべく詳細は控えるが、映画が獅子頭連をどう位置づけ、物語にどう絡めてくるのか。アクションと心情描写の両立が、序盤から大きな見せ場となりそうである。
萩原健太郎監督に期待したい、“風”の演出
2つ目は、実写ならではのロケーションと演出。監督を務めるのは、映画『ブルーピリオド』や『傲慢と善良』を手がけた萩原健太郎。実写化という難題に向き合い、成果を出してきた人物である。『ブルーピリオド』では、主人公・八虎が衝動を受けた“青”を、渋谷の空気ごと映像に落とし込んでいた。現実の光や温度を通じて、物語の情感を立ち上げていく手腕には信頼が置ける。
本作の撮影は、沖縄でオールロケを敢行。物語の舞台である東風商店街は、実在する商店街をベースに大規模なセットを組み、自治体や地元住民の協力のもとで再現されたという。ボウフウリンの口上が掲げられた看板や、商店街のアーチなど、細部に至るまでこだわりが感じられる。
そして、今回の実写化で象徴的なのは“風”の映像化である。タイトルにも通じるこの要素を最大限に活かすため、現場では風速25km/sを超える爆風を生み出す特殊機材を複数導入。立っているのも困難な中、キャストたちは全身で風とぶつかりながらアクションに挑んだそうだ。TVアニメや漫画では描ききれなかった“風”を、実写ではどのように活かして映し出すのか。新たな臨場感への挑戦に注目したい。