『めおと日和』にアラサー筆者がどハマりした理由 芳根京子だから成立したヒロイン像

アラサーが『めおと日和』にどハマりした理由

 いつからだろう、ラブストーリーにハマれなくなったのは。酸いも甘いも噛み分けた大人同士の恋愛模様や、あくまでも主軸はミステリーやお仕事ドラマで、そこに恋愛要素が含まれている作品なら観られる。問題は“ピュアさ“や“胸キュン”を前面に押し出した恋愛ドラマだ。アラサーの筆者はすでにターゲット層から外れていることは重々承知の上でたまに覗き見すると、どうにもムズがゆくなってしまって途中でギブアップしてしまうことが多い。

 そんな私がなぜか、『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)にどハマりしている。正直なところ、「昭和11年を舞台に交際ゼロ日婚からスタートする、歯がゆくも愛らしい“新婚夫婦の甘酸っぱい時間”を丁寧に描いたハートフル・昭和新婚ラブコメ」という紹介文を見た時点では食指が動かなかった。しかし、いまや“瀧なつ”と“ふかふみ”の恋愛模様に感情を揺さぶられまくって、テレビの前で他人には見せられないような顔をしているし、1週間が永遠にも感じられるほど次の回を心待ちにしている自分がいる。なぜか。それは、信じられる“愛”がそこにあったからだ。

 ラブストーリーを純粋な気持ちで観れなくなった理由の一つとして、現実の恋愛の厳しさを思い知ったからというのがある。特に、現代の恋愛は昔に比べて打算的だ。今の社会全体が先行きの見えない不安に覆われていること、SNSや推し文化の影響もあるのか、結婚相手に求める条件がどんどん厳しくなっているように感じる。そんな恋愛市場に自ら飛び込み、熾烈な戦いの末に理想の相手と結ばれたとしても幸せになれるとは限らないということは、世間を賑わす不倫スキャンダルやSNSで流れてくる夫や妻への愚痴で誰もが日々実感させられている。だから、ドラマで描かれる純愛が、現実にはありえないファンタジーに思えてしまうのだ。

 にもかかわらず、多くの人がなつ美(芳根京子)と瀧昌(本田響矢)のピュア度MAXな夫婦生活に夢中になれたのは、まず時代設定が大きい。舞台になっている昭和初期はお見合い結婚が主流だった上に、婚姻前の男女が一緒に出歩くことは一般的に慎むべき行為とされていたので、恋愛も今みたいに自由に楽しむことはできなかったと考えられる。それが前提にあるため、2人が恋愛に不慣れな設定もすんなり受け入れられた。

 とはいえ、「昭和だから」の一点で押し切るのは無理がある。特になつ美なんてキスの仕方が分からず、酸欠で倒れてしまうレベルのウブさで、普通なら「んなわけ!」と思わずツッコミを入れてしまうところだ。でも、その純粋さを信じさせてくれたのが、芳根京子だった。前クールの『まどか26歳、研修医やってます!』(TBS系)でも感じたことだが、こんなにもドタバタ系のヒロインを嫌味なく演じ、心から応援したい気持ちにさせてくれるのは芳根くらいだろう。

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