山本舞香が体現した“愛されツンデレ像” 『めおと日和』芙美子役は納得のキャスティング

山本舞香が体現した“愛されツンデレ像”

 春クール1番と言っても過言ではない盛り上がりをみせる『波うららかに、めおと日和』(フジテレビ系)。結婚から恋愛が始まり、不器用に距離を縮めていったなつ美(芳根京子)と瀧昌(本田響矢)がかわいいだけでなく、サブカップルとなる“ふかふみ”こと深見(小関裕太)と芙美子(山本舞香)に主人公カップルとは違う味わいがあることは、本作の大きな強みだろう。

 深見は帝国海軍中尉である瀧昌の同僚であり、芙美子は海軍士官の奥様会「花筏の会」会長の姪としてなつ美と出会った。本来なら、交わることがなかった深見と芙美子だが、芙美子が縁談から逃げるために深見の名をあげたことに対するなつ美の反応と深見の興味から2人は互いを認識するようになり、関係が動き始めた。深見は心の内を読ませない飄々とした男性で、芙美子も簡単には表情を緩めないクールな女性だが、瀧昌となつ美の関係をあたたかく見守っているという意味では、同じ優しさを持っている。第5話では、夫婦喧嘩の仲裁という名の小競り合いをきっかけにグッと距離が縮まっていく。

 原作漫画では、なつ美と瀧昌の生活描写が圧倒的に多いため、原作ファンの中にはドラマでどれくらいふかふみを描いてくれるのかと不安半分で観ていた人もいるのではないだろうか。蓋を開けてみれば、2人の出会い、喫茶店デート、お見合い、妹弟による面談と毎話ふかふみパートが丁寧に描かれていた。また、第7話の雨が降るバス停での会話や第9話の線香花火などは原作にはないドラマオリジナルエピソードだ。原作者である西香はちのSNSによれば、第7話のバス停での会話は西香による監修を経た内容になっているとのこと。(※)原作者の意向を大切に、2人のキャラクターと仲の深まりを丁寧に描きたいという意図が感じられる。

 特に芙美子役に山本舞香を抜擢したことは、春クール屈指のベストキャスティングではないだろうか。そもそも、原作に描かれたつり目、つり眉、あまり口を開けずに話す涼やかな顔つきの芙美子のイラストと、山本の大きな猫目、引き結んだ薄めの唇が印象的な外見が驚くほどぴったりなのだ。山本の低めでゆったりとした声色も、芙美子の声としての納得感がある。原作でもなつ美に比べて表情の変化の乏しい芙美子だが、山本はふとした口角の変化や視線の変化などの繊細な表現で芙美子のクールなだけではない聡明で思いやりのある人間性を表現している。また、深見の言葉に心を揺らし、戸惑ったり、照れたりしたときのギャップがかわいらしく、大きな瞳がゆるんだ笑顔にはキュンとさせられてしまう。ふかふみが互いの見えないところで互いに心が乱されているときの表情を見ていると、生身の人間が演じる意味を改めて感じるのだ。

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