『ジークアクス』の最終的な着地点を考える アムロ登場の可能性とニュータイプ論の行方

その一方、第11話の予告映像では、ジークアクスに乗ったマチュとGFreD(ジフレド)に乗ったニャアンの対決が示唆されていた。主人公の親しかった人物が宿敵になるという展開は、『ガンダム』シリーズで何度も描かれてきたため、ある意味王道とも言えるだろう。
とはいえ、2人が対立したまま物語が終わる可能性は低いのではないだろうか。今のところマチュとニャアンは、基本的には大人たちの思惑に振り回されるだけの子どもとして描かれている。まんまと掌の上で転がされて戦ったとしてもカタルシスが得られないばかりか、“自由”という作品のテーマとも整合性がとれないだろう。
シリーズ構成・脚本を手掛ける榎戸洋司への期待
しかも『ジークアクス』でシリーズ構成・脚本を手掛ける榎戸洋司は、『少女革命ウテナ』を代表作にもつ脚本家だ。同作ではまさに権力をもった男たちの犠牲になる少女たちの姿と、そこからの解放が描かれていた。今さら“籠の中の鳥”で終わるようなストーリーにはしないはずだ。
そもそも物語の始まりである第1話では、マチュは難民としてのニャアンの境遇を目の当たりにしたことをきっかけに権力者に反旗を翻すのだった。そんな共感性に満ちたシスターフッド的な関係性から始まった物語が、対立を強調するようなクライマックスに向かうとは想像しにくい。むしろ2人が大人たちの思惑を破壊する方向へと進むことを期待したくなる。
また、作品のテーマについて考慮するなら、「ニュータイプ論」の着地点も気になるところだ。『ガンダム』シリーズの生みの親・富野由悠季は、『ファースト』においてニュータイプという概念を導入することで、人類の革新によってよりよい未来が到来する可能性をポジティブに示してみせた。
しかし続編の『機動戦士Ζガンダム』では、むしろその限界を容赦なく描き、その後ニュータイプの概念は富野作品からフェードアウト。『アニメを作ることを舐めてはいけない -「G-レコ」で考えた事-』(KADOKAWA)では、富野はニュータイプというテーマが「現実に敗北していった」という実感すら語っていた。
鶴巻和哉監督×榎戸洋司が描く「ニュータイプ論」とは?
ではなぜ『ジークアクス』は、ニュータイプ論をあえて導入したのか。念のため言っておくと、監督の鶴巻和哉は人間が超常的な力を手に入れるというビジョンを楽観的に描くような作家では決してない。
榎戸とのコンビで手掛けた『フリクリ』や『トップをねらえ2!』を観れば、そのことは一目瞭然だろう。ざっくりといえば、超常的な力は思春期の万能感に由来する錯覚でしかなく、その先にこそ本当の強さがある……というような地に足のついたジュブナイルを好む作家だ。
『ジークアクス』では、これまでニュータイプの力が「キラキラ」として美化されてきたものの、第10話ではニャアンによるイオマグヌッソの起動という形でその危険性が明確に示された。他方でシャリア・ブルがマチュに対して、人殺しの道具ではないニュータイプの可能性を託していたことも印象深い。やはり一筋縄ではいかない展開が待ち受けているのではないだろうか。
ちなみにララァが「カバスの館」という娼館で働いているという設定の元ネタは、富野が手掛けた小説『密会 アムロとララァ』(角川スニーカー文庫)だ。同作は1年戦争の裏で繰り広げられたアムロとララァの交流を通して、ニュータイプのポジティブな可能性を垣間見させる内容だった。そのことからも、あらためてニュータイプ論を考え直そうとする制作陣の意気込みが伝わってくる。
毎回のように怒涛の展開が続いている『ジークアクス』だが、一体どのような結末へと向かっていくのだろうか。まったく予想はつかないが、そこに待ち受けているのは、視聴者の期待や不安すら振り切った前代未聞の到達点かもしれない。
■放送情報
『機動戦士 Gundam GQuuuuuuX』
日本テレビ系にて、毎週火曜24:29〜放送
キャスト:黒沢ともよ、石川由依、土屋神葉
制作:スタジオカラー/サンライズ
原作:矢立肇、富野由悠季
監督:鶴巻和哉
シリーズ構成:榎戸洋司
脚本:榎戸洋司、庵野秀明
キャラクターデザイン:竹
メカニカルデザイン:山下いくと
アニメーションキャラクターデザイン・キャラクター総作画監督:池田由美、小堀史絵
アニメーションメカニカルデザイン・メカニカル総作画監督:金世俊
デザインワークス:渭原敏明、前田真宏、阿部慎吾、松原秀典、射尾卓弥、井関修一、高倉武史、絵を描くPETER、網、mebae、稲田航、ミズノシンヤ、大村祐介、出渕裕、増田朋子、林絢雯、庵野秀明、鶴巻和哉
美術設定:加藤浩(ととにゃん)
コンセプトアート:上田創
画コンテ:鶴巻和哉、庵野秀明、前田真宏、谷田部透湖
演出:鶴巻和哉、小松田大全、谷田部透湖
キャラクター作画監督:松原秀典、中村真由美、井関修一
メカニカル作画監督:阿部慎吾、浅野 元
ディティールワークス:渭原敏明、田中達也、前田真宏
動画検査:村田康人
デジタル動画検査:彼末真由子(スタジオエイトカラーズ)、三浦綾華、中野江美
色彩設計:井上あきこ(Wish)
色指定・検査:久島早映子(Wish)、岡本ひろみ(Wish)
特殊効果:イノイエシン
美術監督:加藤浩(ととにゃん)
美術監督補佐:後藤千尋(ととにゃん)
CGI監督:鈴木貴志
CGIアニメーションディレクター:岩里昌則、森本シグマ
CGIモデリングディレクター:若月薪太郎、楠戸亮介
CGIテクニカルディレクター:熊谷春助
CGIアートディレクター:小林浩康
グラフィックデザインディレクター:座間香代子
ビジュアルデベロップメントディレクター:千合洋輔
撮影監督:塩川智幸(T2 studio)
撮影アドバイザー:福士享(T2 studio)
特技監督:矢辺洋章
ルックデベロップメント:平林奈々恵、三木陽子
編集:辻󠄀田恵美
音楽:照井順政、蓮尾理之
音響監督:山田陽(サウンドチーム・ドンファン)
音響効果:山谷尚人(サウンドボックス)
主・プロデューサー:杉谷勇樹
エグゼクティブ・プロデューサー:小形尚弘
プロデューサー:笠井圭介
制作デスク・設定制作:田中隼人
デジタル制作デスク:藤原滉平
配給:東宝/バンダイナムコフィルムワークス
宣伝:バンダイナムコフィルムワークス/松竹/スタジオカラー/日本テレビ放送網/東宝
製作:バンダイナムコフィルムワークス
©︎創通・サンライズ
公式サイト:https://www.gundam.info/feature/gquuuuuux/
公式X(旧Twitter):@G_GQuuuuuuX






















