『Zガンダム』ネタまで出てきた『ジークアクス』を総括 サイコ・ガンダムはどうなる?

『ジークアクス』になぜ魅了されるのか

 2025年の新たな『ガンダム』シリーズとして、日本テレビ系で放送中の『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(以下、『ジークアクス』)は、従来のガンダムファンとライトな新規視聴者を巻き込んで、様々な話題で盛り上がっている。テレビシリーズの先行上映という形で公開された『機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-』は、1月17日の公開からわずか66日間で興行収入32億9000万円、上映フィナーレ時期の3月30日には興収33億4000万、観客動員数202万人を記録するなど、放送前から凄まじい記録を打ち立てた。4月早々、テレビで観られるというのにだ。何がそこまで多くの人を惹きつけているのだろうか。

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』TV Series Promotion Reel

 『ジークアクス』は、1年間にわたる地球連邦軍とジオン軍の戦争(通称・1年戦争)を描いた1979年のテレビアニメ『機動戦士ガンダム』の“IF(もしも)”の物語で、連邦軍が勝利した原典とは異なり、ジオン軍が戦争に勝った世界線で話が展開する。長年ガンダムシリーズを見続けているファン層は、1979年の正史をひっくり返す手法で語られる新作に興味をそそられ、新規ファンは庵野秀明率いるスタジオカラーのスタッフがガンダムシリーズの源流を別視点で練り上げることに関心を抱いた。

 本作が1年戦争のIF物であることを事前情報で察知したファンが、テレビに先駆けて中身を確かめようと先行上映に殺到したのは容易に想像できる。が、旧来のコアなファン層以外にも『ジークアクス』を観ている人が意外に多いのも面白い現象だ。『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版』4部作を放ったスタジオカラーと、ガンダムの制作会社サンライズがタッグを組んだ、という座組もアニメファンからの注目度が高い理由と思われる。主題歌・挿入歌を米津玄師と、バーチャルアイドル星街すいせいが担当するというフックも効いたのだろう。

 先行上映版『Beginning』は、テレビシリーズ3話分の内容にあたるが、この上映版がそっくりそのままテレビ版に移植されているわけではなく、ガンダム世界の重要キャラ、シャア・アズナブルが出てくる1年戦争パートの一部がテレビ版では欠落している。テレビ放送用の尺合わせであろうが、作中でシャアが消息を絶って行方不明になる箇所がなくなり、経緯を外側から目撃していた登場人物の独白で処理された。今後、このパートが改めてテレビシリーズに組み込まれるのか、別視点から語り直されるのかは不明だが、なぜここをカットしたのかは気になる所だ。

 『ガンダム』シリーズのコアなファンではないにせよ、テレビCMを通じて『機動戦士ガンダム』の主人公アムロ・レイとシャアぐらいは知っている、主役機のガンダムが白いボディなのは分かっている、という人も多かろう。『ジークアクス』は、アニメファンにとって周知の事実をことごとく裏返していく意外性があり、「そう来ましたか……」と楽しめる部分に繋がっている。シャアが連邦軍の新型モビルスーツ、ガンダムを奪ってボディを赤くペイントしていたり、やはり連邦軍のホワイトベース型ペガサス級戦艦が敵に奪われ、ファンの見知った白色ではなく緑色の外装に変わっているなど、枚挙に暇がない。そもそもシャアが強奪してしまったことで、本来はガンダムのパイロットになるはずのアムロが出てこなくなり、『ジークアクス』第6話まではその影すら見えない。『ガンダム』正史でシャアの専用機は常に赤くペイントされていたが、『ジークアクス』では遂に“シャア専用の赤いガンダム”が出てきたわけで、こうした創り手のくすぐりも話題の拡大に大きく買っている。

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