大塚剛央、土屋神葉、梅田修一朗らが示した“声の力” 2025年春アニメで活躍した男性声優たち

春アニメで活躍した男性声優たちを振り返る

 アニメはさまざまな要素が組み合わさって生まれる総合表現だ。その中でも“声”が作品に与える影響はときに絶大だ――そう強く感じさせてくれたのが、2025年春クールのラインナップだった。本稿では、感情の熱や静けさ、言葉ににじむ余韻までを繊細にすくい上げ、キャラクターに命を吹き込んだ3人の男性声優に注目する。4月〜6月に放送された作品を中心に、その演技を振り返っていきたい。

大塚剛央

 『薬屋のひとりごと』第2期の放送を機に、壬氏役を務める大塚剛央の名前は大きく世間に広がった。もともと声優やアニメファンのあいだでは実力派として知られていたが、この作品のヒットが追い風となり、普段アニメを観ない層にもその存在が浸透していったのではないだろうか。

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 壬氏は、原作で「甘い蜂蜜のような声」と表現されるキャラクター。その声色ひとつで、色気も知性も、どこか掴みきれない底知れなさまでを自然に立ち上げてみせるのが、大塚の演技だ。なかでも「確認してみるか?」と猫猫に迫る“カエル騒動”の一幕は、忘れがたい名台詞のひとつ。第2期では猫猫との距離も少しずつ近づき、品のある色気はそのままに、ときおり感情の揺れがにじむ場面も増えた。

 2025年上半期には、『沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる』の中村照秋、『メダリスト』の明浦路司、『トリリオンゲーム』の天王寺陽、『カードファイト!! ヴァンガード Divinez』の八雲カゲツと、主演を5作品で担当。柔らかく親しみやすい青年から、ひたむきな努力家、華やかなエリートまで、振れ幅のある役柄を巧みに演じ分けてきた。

 キャラクターの“呼吸”に寄り添うような演技設計は、いまや大塚の代名詞ともいえる。今期の顔としてだけでなく、2025年前半のアニメシーンを象徴する存在として、その名を確かに刻みつつある。

土屋神葉

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX(ジークアクス)』TV Series Promotion Reel

 今期、SNSを通じて最も強い“語感”を残したキャラクターのひとりが、土屋神葉演じる『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のシュウジだった。不思議な浮遊感をまとった青年でありながら、核心にふれるような言葉をふいに投げかける。中でも「◯◯、とガンダムが言っている」というフレーズは“シュウジ構文”と呼ばれ、ファンアートやオマージュが爆発的に拡散。作中のみならず、SNSミームとしても広く浸透した。

 こうしたユニークなセリフ回しは、やりすぎればネタに傾きかねないが、土屋の演技は終始抑制されており、語尾や息遣いの自然さが台詞の不穏さや余白を際立たせる。そこに生まれる絶妙な緊張感は、ある種の哲学的な余韻すら帯びていた。

 セリフの強さに頼るのではなく、キャラクターの奥行きをそのまま声に落とし込んでいく――その技術とセンスには、丁寧な役との向き合い方がにじむ。物語上でも重要な位置にありながら、背景が明言されることの少ないシュウジという存在を、“説明しすぎない”ままに浮かび上がらせた演技は、作品全体の印象をも左右する力を持っていた。

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――「戦え」とガンダムが言っている。  ふわふわとしていて、何を考えているのか読めない。近いようでいて、遠い。『機動戦士Gun…

 7月からは『ブスに花束を。』で、明るく素直な青年・上野陽介役を担当予定。スポーツ万能で、誰にでも優しく親切に接する“イケメンリア充”キャラを演じるとのことで、シュウジとは対照的な人物像を、また違った声の表情で楽しませてくれそうだ。

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