『恋は闇』“本心”が見えない西田尚美の演技の魅力 『クジャク』『片思い世界』との共通点

『恋は闇』“本心”が見えない西田尚美の魅力

 映画『片思い世界』で西田が演じた優花(杉咲花)の母親・彩芽もそうだ。花屋の店員として働きながら、家では娘の海音(清水珠愛)とクッキーを焼くなど、穏やかな日常を過ごしているように見えた彼女。しかし、再婚して幸せな家庭を築いているように思えた彩芽は、実際にはやりきれない感情を胸に隠し持っていた。失われた大切な子どもの命を決して忘れることなく、娘を殺した人物のもとに自ら出向いて本心を伝える。ずっと塞ぎ込んでいた感情が一枚ずつ剥がされていくような西田の切実な芝居は、今もなお、その光景が脳裏に焼きついているほど真に迫るものだった。

 そして、1月から放送されていた浅見理都の同名漫画を原作にしたヒューマンサスペンス『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)では、そんな西田の本心を隠した芝居が物語の大きなカギを握っていた。

 殺された元警察官・山下春生(リリー・フランキー)が残した手紙から、彼を殺した犯人と22年前の事件の真相に迫っていく本作で西田が演じたのは、捜査一課の刑事・赤沢正(藤本隆宏)の妻である京子。ドラマをすべて観終えた人なら承知しているように、春生を殺した真犯人でもあるキャラクターだ。

 物語の中心人物を演じた広瀬すずや松山ケンイチでさえ、事件の真犯人を知らされていないなかで、真犯人となる役柄を周囲に悟られることなく演じるのは至難の業。実際、他のキャストは「誰が犯人なのか?」と疑心暗鬼になりながらライブ感のある芝居を披露しているわけで、彼女からしてみれば、そんなリアルな空気感に紛れながら京子を演じなければならない。他のキャストに比べると突出した難易度だったと言える。

 それでも、序盤の数話を振り返ると、時折、心麦(広瀬すず)に真意を知られそうになって焦りを見せるシーンも映し出されており、彼女がどれほど細心の注意を払って京子を演じていたのかあらためて思い知らされた。疑わしくとも断定はできない。その微妙なラインを見極めながら京子というキャラクターを演じきり、最終話のモノローグでは心が抜け落ちたような声色で、自身が犯した罪を告白する。物語の結末がドラマチックになったのは、彼女がそれまで“本心”を決して悟られることなく、胸の奥に秘める芝居をこなしてきたからこそだろう。

 『恋は闇』第8話で晒された沙樹の“本心”は、とても打算的なものだった。それでも、番組への愛情や同僚に対する思いを踏み越えてでも、本当にやりたい仕事へと戻るためには媚を売ることもいとわない彼女の裏の顔さえ、西田は誠実に演じていたように見える。そして、そんな沙樹の姿は、二面性を持つ浩暉とともに過ごす万琴にとっても他人事ではなかったはずだ。

 沙樹の許可をもらい、再び事件の担当へと戻ることになった万琴。殺人現場で浩暉と遭遇した彼女は、沙樹の本当の望みを察したように、浩暉の奥底にある“本心”を見抜くことができるだろうか。

『恋は闇』の画像

恋は闇

『あなたの番です』『真犯人フラグ』の制作スタッフが完全オリジナル脚本で描く“究極の恋愛ミステリー”。主人公・浩暉に次々と浮上する疑惑と、彼を愛したヒロイン・万琴の葛藤を通して、「真実を見抜けるか?」を描いてく。

■放送情報
『恋は闇』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:志尊淳、岸井ゆきの、森田望智、白洲迅、齋藤飛鳥、望月歩、小林虎之介、浜野謙太、猫背椿、西田尚美、萩原聖人、田中哲司
脚本:渡邉真子
音楽:末廣健一郎
監督:小室直子、鈴木勇馬
プロデューサー:鈴間広枝、能勢荘志、松山雅則
チーフプロデューサー:道坂忠久
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/koiyami/
公式YouTube:https://youtu.be/zSxx0-j20c8
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