『恋は闇』“本心”が見えない西田尚美の演技の魅力 『クジャク』『片思い世界』との共通点

着々と「ホルスの目殺人事件」の“犯人”としての外堀が埋められていくなかで、とうとう決定的な瞬間が訪れる。ドラマ『恋は闇』(日本テレビ系)の第8話のラストカットで映し出されたのは、現場で血まみれのナイフを持って立ち尽くす浩暉(志尊淳)の姿だった。
これまでも犯人と思わせる描写はあったものの、ここまで明白に映し出されるのは初めてのこと。しかし、まだ最終回まで話数が残っているなかで、わかりやすく怪しい人物として仕立て上げられてきた浩暉が、そのままストレートに犯人だとは考えづらい。向葵(森田望智)や鑑識の松岡(浜野謙太)など、いまだに疑わしい動きをする人物も多く見受けられるからだ。
そして、怒涛の展開を迎えた第8話では、今まで取り沙汰されなかった意外な人物の素顔が露わになった。それが、万琴(岸井ゆきの)の上司であり、番組のプロデューサーでもある沙樹(西田尚美)だ。

これまでは、番組の放送内容をめぐって総合演出の野田(田中哲司)と対立することはありつつも、万琴が「ホルスの目殺人事件」の犯人と思しき人物に襲われた際は、オフィスに現れた彼女を心配して抱き寄せるなど、後輩たちを優しく気遣う姿が印象的だった。しかし、万琴に直接、「ホルスの目殺時事件」の担当から外した真意を問われると、「バレちゃったか……」と呟き、自身が報道に戻るための策略だったことをあっけらかんと白状する。
これまで万琴たちを見守ってきた頼れる上司としての顔とは異なる、巧妙な策士としての一面が判明するシーンだったが、どこか憎みきれないのは、演じていたのが西田尚美だったことも影響しているのかもしれない。
西田と言えば、たびたび見せるチャーミングな表情と飾らない人柄が滲み出るような芝居で、長年、さまざまな映像作品における母親役としての姿を観ない日はない役者だ。例を挙げれば枚挙にいとまがないが、2018年からECサイト「北欧、暮らしの道具店」によって配信されているWebドラマ『青葉家のテーブル』の青葉春子のイメージがふと頭に浮かんだ。2021年には映画化もされた本作で主演を務めた西田は、一風変わった4人で共同生活を送る青葉家の家主である春子を自然な佇まいと気取らない姿で軽やかに演じており、その飾らない素顔には誰もが親しみを持ちたくなってしまうのも頷ける。
しかし、2025年の出演作品をざっと眺めてみると、一見、これまでと変わらない温かな母親像を見せつつも、胸の奥には別の想いを隠した役柄を演じていることが多い。






















