『あんぱん』今田美桜×中島歩の抱擁は最後になってしまうのか のぶに植え付けられた愛国心

のぶが複雑そうな表情を見せるなか、朝田家には国防婦人会のメンバーが。愛国の鑑ともあろう人が外国製の写真機を持ち歩いているなんてと咎められてしまう。町ですれ違った人が告げ口をしたのだろう。何をしていても監視されているというわけだ。戦地の兵隊さんを思ったら写真機で遊んでいる場合ではない、贅沢は敵だ! と責める民江(池津祥子)を次郎は上手にいなす。
結太郎や嵩との思い出を振り返って昔の自分との違いを自覚したこと、のぶ自身も贅沢品だと引け目を感じていたカメラで人を楽しませた次郎を見て、心が動いたのだろう。帰りの電車でのぶは次郎に戦争が終わったらしたいことを小声で告げる。
「生徒らに楽しい授業をしたい、立派な兵隊さんになれというがやのうて」
「次郎さんと一緒にいろんな国に行ってみたい」
声高らかには言えないのぶの夢は、教師を目指したあの頃と変わらない。次郎の言動に触れたことで、本当の自分を一瞬だけでも取り戻すことができたのだ。

次郎が次の航海に向かう日の朝、次郎はカメラをのぶに託す。次郎の勤務する貨物線が軍用の輸送船になり、狙われるかもしれない船に乗ること、自分がいつどうなるか分からないことを告げる。多くの国を見てきたであろう次郎は、大国アメリカに日本が勝てるとは思えないと、正直な思いを吐露する。それを聞いたのぶは烈火のごとく怒り出してしまう。日本の勝利を信じ抜くことも愛国心の表れだ。一瞬、本当の自分を取り戻すことができたのぶだったが、強い口調で自分に言い聞かせるように反論するのぶの様子からは彼女が受けた教育の根深さが伝わってくる。そんなのぶを優しく抱き止め、教師としての苦悩を労う次郎。次郎を見送るときにシャッターを切ろうとするのぶだったが、無事に帰ってきたらと撮影をやめる。それは、次郎の安全を願うと共に、日本の勝利を信じている心の表れでもあるのだろう。
本当の自分と愛国心を刷り込まれた自分の間で揺れるのぶの様子を繊細に演じる今田の演技力の高さが光る回だった。

東京では、健太郎(高橋文哉)を見送り一人で暮らす嵩の元に「アカガミキタ スグカエレ」と書いた電報が。嵩を見送ることになるのぶは、何を思うのか。
■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、加瀬亮、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、細田佳央太、高橋文哉、中沢元紀、大森元貴、二宮和也、戸田菜穂、浅田美代子、吉田鋼太郎、竹野内豊、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK






















