『あんぱん』江口のりこ×戸田菜穂、2人の妻の“怒り”の献杯 のぶが嵩の後悔を包み込む

『あんぱん』2人の妻の“怒り”の献杯

 『あんぱん』(NHK総合)第42話は、哀惜の念に包まれる放送回となった。

 羽多子(江口のりこ)とのぶ(今田美桜)が柳井家に弔問に訪れる。寛(竹野内豊)の祭壇に手を合わせ、丁重に礼を述べた。帰ろうとする羽多子を千代子(戸田菜穂)が呼び止める。いくぶんやつれた様子の千代子は、羽多子の来訪を待ちわびていたかもしれない。「ちょっとつきおうてもらえませんか?」と言って階上へ招いた。

 羽多子と千代子が交わす会話。寛が好きだったウイスキーで献杯しながら、ありし日の故人をしのんだ。夫を亡くした者同士である。生前、親交の深かった寛と結太郎(加瀬亮)は子どもの頃から無二の親友であり、酒を酌み交わすこともあっただろう。あらためてこうして向き合うことで、その存在の大きさが感じられる。

 千代子は寛に叱られた思い出を語る。子どもができずに自分を責める千代子を「君はこの家と結婚したがか?」と優しく諭す寛。その言葉に千代子はどんなに救われただろうか。家制度の下で苦しむ女性の姿は、千代子や黒井(瀧内公美)の逸話を通して本作で描かれてきた。寛は家族の誰にも家の桎梏、縛りを課さなかった。それは千代子だけでなく、嵩(北村匠海)や千尋(中沢元紀)、登美子(松嶋菜々子)に対しても同じである。

 悲しみの表現はいくつもあるが、怒りはその一つだ。その場にいない寛や結太郎にぶつけるように、千代子と羽多子は本心を打ち明ける。「さっさと向こうへ行ってしもうた寛さんに怒っちゅうが」と述べる千代子に羽多子も同意。夫は突然この世を去り、残された妻たちには最後に一緒にすごす時間も与えられなかった。死を受容し、アルコールとともに、心の底に押し込めてきた悲しみを浄化させるようだった。

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