竹野内豊の声をもっと聴きたかった 『あんぱん』何度でも噛み締めたい寛の名言

NHK連続テレビ小説『あんぱん』で竹野内豊演じる柳井寛が登場すると、セリフの一つ一つが心に響く「名言」として余韻を残し、その存在は時に神々しくさえ感じられた。
甥である嵩(北村匠海)と千尋(中沢元起)兄弟を引き取り、実の息子のように育てていた寛。伯父としてというよりも、人生の先輩として、嵩と千尋が自分らしい人生を歩んでいけるように優しい言葉を真っ直ぐに届けてきた。まさに人生のメンターというべき、良き指導者であり、助言者として竹野内は理想的な大人を体現していたのだ。
残念ながら第9週「絶望の隣は希望」に突入した矢先に寛は物語から退場してしまったが、本稿では改めて彼が遺した名言の数々を振り返っていきたい。

第3週「なんのために生まれて」、第4週「なにをして生きるのか」のタイトルは嵩と千尋に対しての寛の言葉であり、「アンパンマンのマーチ」の印象的な歌詞にもある。第11話の柳井家の夕食のシーン。将来、寛の病院を継ぐのは誰か、病院を継がないのであればどういう道に進むのか、プレッシャーを感じている嵩と千尋に対して寛は、「人生には替えがきかんがや。今からしっかり考えちょけ。何のために生まれて、何をしながら生きるがか、何がおまんらの幸せで、何をして喜ぶがか。これや!というもんが見つかるまで何べんでも何べんでも必死で考え」と言う。

そして、第18話では、けんかした嵩と千尋に、寛は改めて後継ぎはいらないと告げる。「何のために生まれて何をしながら生きるがか見つかるまで、もがけ。必死でもがけ」と静かに言い聞かせる。寛の妻であり、嵩と千尋にとって伯母に当たる千代子(戸田菜穂)にしてみれば、男子2人を預かり、養育しているのだから、いずれは柳井診療所を注いでくれるはず……という気持ちもあっただろうが、寛が尊重したのは甥っ子2人の人生だった。

“愛国の鑑”と呼ばれるのぶ(今田美桜)と、東京で美術を学ぶようになった嵩の気持ちがすれ違い、せっかく帰省した嵩に東京へ帰れとけんか別れした時のこと。のぶが駅で寛と会い、落ち込むのぶに寛は「のぶちゃんは信じる道を正直に走っていけばえい。嵩は自由気ままにのんびり自分の道を進んでいくやろう。そのうち、どっちかが立ち止まることがあるかもしれん。今は平行線に思得ても、いつか2人の道が交わる日が来るかもしれんよ」と声をかけていた。




















